その他|間葉性異形成胎盤(平成23年度)
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1. 概要 | |
間葉性異形成胎盤(placental mesenchymal dysplasia, PMD)は、超音波断層法にて胎盤の嚢胞状変化を呈し、組織学的に胞状奇胎とは異なる胎盤の形態異常である。妊娠中の超音波断層法スクリーニングがなく、PMDの疾患概念が普及していなかった時代には、原因不明の巨大胎盤としてPMDと診断されないままに終わった症例が相当数あるのではないかと推定される。これまでの内外におけるPMDの報告はいずれも散発的な症例報告であり、系統的な調査はなされていない。 | |
2. 疫学 | |
PMDは1990年代に入って内外で報告され始め、2007年までの症例報告は約70例だが、実際の頻度は4,000~5,000妊娠に1例(0.02%)と推定されている。 | |
3. 原因 | |
原因は不明である。Beckwith-Wiedemann 症候群を合併することがあることから、11番染色体領域のインプリンティング異常によるインプリント遺伝子IGF2の過剰発現やCDKN1Cの発現低下が推測されている。また、PMDでは女児の妊娠に伴うことが多いことからX染色体上のVEGF-D遺伝子の関与が示唆されている。しかし、いずれも確定的ではない。 | |
4. 症状 | |
母体にはとくに症状はない。超音波断層法では胎児と共に肥厚した胎盤が認められ、その実質内に大小不整な嚢胞や管腔様構造を呈し、胎児共存奇胎や部分胞状奇胎との鑑別を要する。胎盤は巨大で、34週以降に分娩に至った症例の70%以上が1,000g以上の重量を呈する。胎盤の肉眼所見も部分胞状奇胎に類似する場合があるが、水腫様の絨毛には血管がありトロホブラストの異常な増殖はない。蛇行した絨毛血管内に間葉系細胞の増生があり多発性の血栓がみられる。 | |
5. 合併症 | |
胎児側:PMDの30%は胎児が子宮内胎児死亡にいたるほか、20%で子宮内胎児発育不全(IUGR)となる。また児の20%はBeckwith-Wiedemann 症候群を呈する。母体側:母体には特にPMDに特徴的な合併症はない。しかしながら、PMDは妊娠初期に部分胞状奇胎や胎児共存奇胎(正常な胚と全胞状奇胎の二卵性双胎であり、胎児は正常に発育するが妊娠を継続しても妊娠高血圧症候群を合併する危険が高く早産に至ることが多い。)と類似した超音波断層法所見を呈する。胞状奇胎と診断された場合には人工流産の適応となるため、PMDであることが正しく診断されなければ無用の人工流産を招くことになる。 | |
6. 治療法 | |
治療法は知られていない。PMDが誤って胞状奇胎や胎児共存奇胎と診断され、無用の人工流産が選択されないよう正しく診断する必要がある。 | |
7. 研究班 | |
「間葉性異形成胎盤の臨床的・分子遺伝学的診断法の開発を目指した基盤研究」班 | |