皮膚疾患分野|類天疱瘡(平成23年度)

るいてんぽうそう
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1. 概要

各種の自己免疫性水疱症は、皮膚構成蛋白に対する自己抗体により、皮膚の細胞接着が傷害されて水疱を形成する疾患である。水疱性類天疱瘡を主とする、類天疱瘡群の疾患は、全身に水疱形成し、組織学的に表皮下水疱を示し、抗表皮基底膜部抗体を検出する皮膚疾患である。代表疾患である水疱性類天疱瘡のほかに、多数の亜型があり、異なった抗原に反応することが明らかとなりつつある。それらの疾患として、粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症、妊娠性疱疹、ジューリング疱疹状皮膚炎、線状IgA 水疱性皮膚症、抗ラミニンガンマ1類天疱瘡などがある。それぞれの疾患に特異的に有効な治療法が開発されつつあり、そのために、生化学的・分子生物学的診断法の確立が重要である。

2. 疫学

最も頻度の高い自己免疫性水疱症で、年齢的には60~90歳の高齢者に多く、近年の高齢化に伴い増加している。まれに小児例もある。性差はない。(正確な統計はないが天疱瘡の約3~5倍と推定される)

3. 原因

類天疱瘡の疾患群は、その血中の抗表皮基底膜部自己抗体が、各種の抗原蛋白に結合することにより、皮膚の表皮と真皮間の細胞接着を傷害し、水疱を形成する疾患である。水疱性類天疱瘡の抗原はBP230 とBP180 であり、後天性表皮水疱症の抗原はVII型コラーゲンである。最近、新しい類天疱瘡としてラミニンガンマ1に反応する疾患が存在することを私共は明らかにし、抗ラミニンガンマ1類天疱瘡と名づけた。水疱性類天疱瘡において、その自己抗体が病原性を有していることは、BP180リコンビナント蛋白蛋白で免疫したウサギ血清のIgG を新生児マウスに投与することにより病変を形成することができることから、明らかになった。さらに、ex vivoの皮膚切片上反応で、後天性表皮水疱症の自己抗体が病原性を有していることも明らかとなっている。

4. 症状

水疱性類天疱瘡では全身の皮膚に、広範囲の浮腫性紅斑が生じ、大型の緊満性水疱が多発する。口腔粘膜病変はないか、あるいはわずかに存在する。激しい痒みがあり、全身状態が悪化することもある。。粘膜類天疱瘡では、口腔内粘膜と口唇の水疱・糜爛性病変が見られる。歯肉に好発するが、頬粘膜、舌下部、硬口蓋や軟口蓋にも見られる。ジューリング疱疹状皮膚炎では、環状配列する、小水疱を生じ、肘、膝、殿部に好発する。。後天性表皮水疱症では、非常に難治な水疱とびらんを形成する。一見正常な皮膚を擦過すると表皮剥離が生じるが、これをニコルスキー現象という。抗ラミニンガンマ1類天疱瘡は、尋常性乾癬に合併する場合と小水疱型類天疱瘡の臨床症状を取ることが多い。

5. 合併症

全身の水疱形成とびらんのため、広範囲熱傷と同様に、全身状態の悪化を生じる。さらに、免疫抑制療法もあいまって、全身のびらんに細菌感染を起こして、敗血症から、DIC をおこし、死に至ることも少なくない。著明な口腔内の疼痛のため食事の摂取困難をきたし、栄養ドリンクの摂取などを必要とすることがある。高齢者に好発するため、ステロイド内服の副作用としての合併症がおきやすい。ステロイド内服の副作用として胃潰瘍、糖尿病、高血圧、骨粗鬆症、高コレステロール血症、高血圧などがある。免疫抑制剤の副作用としての合併症に、骨髄抑制、感染症、肝障害などがある。また、ミノマイシン、アクロマイシン、ロキシスロマイシン、DDS などの副作用としての合併症に、肝障害、腎障害、貧血、色素沈着などがある。

6. 治療法

類天疱瘡の治療ではステロイド内服が中心であるが、他の治療法が有効なことがある。水疱性類天疱瘡や粘膜類天疱瘡の軽症例では、DDS、ミノマイシン、アクロマイシン、ロキシスロマイシンが奏効することもある。中-重症ではPSL 20-40mg/日を要する。。難治の場合の併用療法としては血漿交換療法とステロイドパルス療法がある。併用する免疫抑制剤としては、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロフォスファミド、ミゾリビンが用いられるが、重篤な副作用の発現に厳重な注意を要する。大量ガンマグロブリン静注療法の有効性が報告され、副作用も少なく使用すべき治療法である。

7. 研究班

類天疱瘡疾患群の抗原解析と新しい検査法による診断基準の作成に関する研究班