内分泌疾患分野|先天性高インスリン血症(平成23年度)
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1. 概要 | |
新生児、乳児期に多く発症し、インスリンの過多分泌によって難治性の低血糖をきたす疾患である。適切に治療を行わないと、けいれんや意識障害を起こすだけでなく、低血糖による神経後遺症を残して発達遅滞やけいれん、脳性麻痺につながる可能性があるため、その管理は非常に重要である。3-4か月を超えて症状が続く持続性のものと、多くは生後3-4週以内に治癒する一過性のものがあることが知られており、持続性のものは遺伝子異常によることが多く特に誘引なく発症するが、一過性のものは低出生体重児や出生前後で何らかのトラブルがあった児に多く、非遺伝性のものが大部分であると考えられている。 | |
2. 疫学 | |
我が国では、持続性の先天性高インスリン血症がおよそ4万出生に一人、一過性のものはその数倍存在すると考えられている。 | |
3. 原因 | |
持続性本症では、膵β細胞にあってインスリン分泌の調節を行っているATP依存性カリウムチャネル(KATPチャネル)を構成する2つの遺伝子、ABCC8とKCNJ11の変異によるものが最も頻度が高く重症である。それ以外に、高アンモニア血症を合併するGLUD1遺伝子異常や、グルコキナーゼ遺伝子異常によるものが知られているが、頻度は少ない。持続性本症のうち、遺伝子異常が同定されるのはおよそ50%で未知の遺伝子異常によるものが存在すると考えられている。KATPチャネル異常によるもののうち、一部は膵の一部に異常β細胞が限局している局所性であることが知られている。 | |
4. 症状 | |
新生児、乳児期に低血糖によりボーッとする、冷や汗、ふるえなどの症状をきたす。重度の場合は意識消失、けいれんにいたり後遺症をきたしたり死亡したりすることもある。一部の例では、年長になってから発症することもある。低血糖は空腹時に多いが、食後1~2時間で症状を出すこともある。 | |
5. 合併症 | |
神経後遺症が最も重要な合併症である。 | |
6. 治療法 | |
ブドウ糖輸液などの対症療法のほか、頻回食、胃瘻や鼻注による持続流動食注入、ジアゾキサイド内服、オクトレオチド皮下注射、グルカゴン注射などが行われる。内科的治療に抵抗性の場合は膵切除が行われるが、95%以上の膵亜全摘を行った場合は高頻度に術後糖尿病を合併する。局所性病変を事前に同定して局所切除を行えた場合は後遺症なく治癒する。 | |
7. 研究班 | |
「先天性高インスリン血症の病態解明と治療適正化に関する研究」班 | |