その他分野|カルシフィラキシス(平成23年度)
| |
1. 概要 | |
末期腎不全により慢性血液・腹膜透析を受けている症例に発症する、極めて強い痛みをともなう難治性の皮膚潰瘍を主症状としている。この皮膚潰瘍は治療に極めて抵抗性であり、皮膚潰瘍への感染などにより死亡する場合もある難治性疾患である。 | |
2. 疫学 | |
我々の研究班が平成21年度に行った調査によれば、透析患者10万人につき1年当たり3〜4人に発症する極めて稀な疾患である。平成22年度調査では、栄養状態の悪い症例に発症する傾向が認められた。諸外国の報告では、腹膜透析、女性の透析患者に多いことが報告されているが、本邦では、明らかではなかった。 | |
3. 原因 | |
基礎病変として皮膚などの細動脈石灰化があり、創傷等を契機として多発性微小塞栓を生じ、その結果として潰瘍が形成されるという発症機転が示唆されている。さらに、その発症過程には炎症機転が関与する事も考えられているが、詳細は明らかではなく、糖尿病性皮膚潰瘍、あるいはワーファリン壊死等と混同される症例も少なくないと想定される。本研究班では、平成21年度に本邦で初めて全国的なカルシフィラキシスの系統的調査・研究を行い、個々の症例の詳細な検討から、疾患概念を確立する試みと、診断基準案作成を行っている。 | |
4. 症状 | |
全身性の、極めて強い疼痛をともなう、多発性・難治性皮膚潰瘍を主症状としている。難治性潰瘍への細菌感染などにより、死亡する場合がある。 | |
5. 合併症 | |
皮膚への感染から、さらには敗血症をともなう。 | |
6. 治療法 | |
副腎皮質ステロイドの外用、二次性副甲状腺機能亢進症に対する治療、高圧酸素療法、チオ硫酸ナトリウム投与、壊死組織の外科的切除、などが原疾患に対する治療法として試みられているが、確立した治療法はない。合併症として、皮膚潰瘍に細菌感染を伴う場合は、抗生物質の使用、基礎疾患に対して血液透析を継続する。腹膜透析症例の場合は血液透析に変更する。 | |
7. 研究班 | |
カルシフィラキシスの診断・治療に関わる調査・研究班 | |