免疫系疾患分野|慢性活動性EBウイルス感染症(平成24年度)
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1. 概要 | |
遷延あるいは再発する伝染性単核症様症状を示し、末梢血および病変組織に高レベルのEBV DNAが検出される疾患である。EBV感染TあるいはNK細胞がモノクローナルあるいはオリゴクローナルに増殖し高サイトカイン血症を呈する。 | |
2. 疫学 | |
日本をはじめとする東アジアに患者が集中している。「慢性活動性EB ウイルス感染症の診断法及び治療法確立に関する研究」班と「EB ウイルス感染症研究会」による共同全国調査によると、2005 年から2009 年の報告患者数は、平均して23.8 人/年である。しかし、実際の患者発生数はもっと多いと思われる。年齢別で見ると、6-10 歳の患者が最も多く、ついで11-15 歳、16-20 歳となっている。しかし、最近では30 歳以上の患者の報告も増えており、特に、2009 年には、約3 割(28%)が診断時に40 歳以上であった。 | |
3. 原因 | |
通常はB細胞を標的とするEBVが、TあるいはNK細胞に感染し増殖を誘発することが病因となると考えられるが、これらの細胞への感染機構(ウイルス受容体など)や増殖誘発機構などは不明である。また、東アジアや中南米への局在性から、何らかの遺伝学的背景をもつことが疑われるが、明確な知見には乏しい。腫瘍性疾患の特性と免疫不全症の特性を併せ持つと考えられているが、病態の詳細は解明されていない。 | |
4. 症状 | |
発熱、リンパ節腫脹、肝脾腫、発疹、間質性肺炎、間質性腎炎、ぶどう膜炎、冠動脈瘤を主症状とする。 | |
5. 合併症 | |
主な合併症として、多臓器不全、血球貪食症候群、悪性リンパ腫、蚊刺過敏症、種痘様水疱症があげられる。 | |
6. 治療法 | |
アシクロビル、ガンシクロビルなどの抗ウイルス薬、インターフェロン、インターロイキン-2、免疫グロブリン静注などの免疫賦活療法、活性化T細胞やEBV特異的細胞傷害性T細胞などによる細胞治療、ステロイド、サイクロスポリンAなどによる免疫抑制療法、エトポシドなどによる化学療法が試されてきたが、これらによる完治例はほとんどない。現在のところ造血幹細胞移植が唯一完治の可能性がある治療法である。 | |
7. 研究班 | |
慢性活動性EBウイルス感染症の発症機構解明と新規治療法開発に関する研究班 | |