先天性中枢性低換気症候群
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1. 概要 | |
先天性中枢性低換気症候群(congenital central hypoventilation syndrome : CCHS) | |
2. 疫学 | |
有病率は5‐20 万人に一人と推測されている。 | |
3. 原因 | |
病因はPHOX2B 変異である。PHOX2B は染色体4p12 に位置し、9 個と20 個のアラニンからなる2 つのポリアラニン鎖を各1 個、homeobox を1 個有する転写調節因子をコードしている。呼吸中枢の形成及び自律神経系の分化・誘導に重要な役割を担っている。90%以上の症例では20 ポリアラニン鎖における、5~13 アラニン(25~33 ポリアラニン)の伸長変異(polyalanine repeat expansion mutation : PARM)が検出され、約10%にはミスセンス、ナンセンス、フレームシフト変異などの非アラニン伸長変異が検出されている。伸長変異の由来に関して、約75%はde novo の変異であり、残り約25%はモザイクや保因者で発症していない親や罹患している親からの遺伝である。 | |
4. 症状 | |
主に睡眠時に無呼吸または低換気を呈する。重症な場合は覚醒時にも低換気を呈する。換気障害に気付かれず、肺高血圧や心不全と診断されたり、apparent life threatening event (ALTE)を呈する例も存在する。典型的なものは新生児期に発症するが、乳児期~ 成人期に発症する遅発性の症例も存在する( late onset central hypoventilation syndrome)。麻酔を受けた際や肺炎罹患時に、症状が顕在化する症例も存在する。 | |
5. 合併症 | |
Hirschsprung 病(約20%)、神経芽細胞腫(約6%)、自律神経系の異常(心拍の呼吸性変動の低下、洞結節不全、房室ブロック、便秘、食道蠕動異常、胃食道逆流症、低体温、痛覚異常、瞳孔異常、涙液分泌異常、発汗異常、体温調節障害など)などがある。 | |
6. 治療法 | |
根本的な治療はなく、対症療法となり、長期的な呼吸管理が必要となる。睡眠時に人工呼吸器の装着が必要であり、安全な気道確保のため、特に乳幼児期には気管切開が必要である。低酸素による脳障害を回避することが最も重要である。 | |
7. 研究班 | |
先天性中枢性低換気症候群の診断・治療 | |