遺伝性ポルフィリン症(平成21年度)
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1. 概要 | |
遺伝性ポルフィリン症は、ヘム合成に関与する酵素群の活性低下が原因と なって種々の病態を生じる先天性代謝性疾患である。ポルフィリン体あるいは前駆体の過剰産生が主として肝細胞で起こるかもしくは骨髄造血細胞で起こるかに よって、肝性と骨髄性(赤芽球性)とに分類される。肝性ポルフィリン症にはAIP、ADP、VP、HCPおよびPCTの5病型が含まれ、骨髄性には CEP、EPPの2病型が含まれる。また、両方の組織でポルフィリンの過剰産生がみられるものとしてHEPがある。 | |
2. 疫学 | |
約450人(報告例のみの数字) | |
3. 原因 | |
ヘム合成系に関与する酵素は全部で8つあるが、ポルフィリン症は、最初 の縮合反応を触媒するα-アミノレブリン酸合成酵素を除く、あとの7つの酵素のいずれかの活性の低下または欠損に起因する。したがって、どの酵素が障害さ れているかによって過剰に蓄積するポルフィリン体あるいは前駆体の種類が異なり、それぞれに異なった病型を生じることになる。各責任酵素の遺伝子解析によ り保因者を同定することができるが、実際の発症には遺伝的素因のみならず、環境(後天的)因子も重要な要素となる。 | |
4. 症状 | |
ポルフィリン症は、臨床的立場から、その症状の違いによって急性神経症 状を主徴とする急性ポルフィリン症と皮膚光線過敏症を呈する主とする皮膚ポルフィリン症とに分類されることもある。急性ポルフィリン症では消化器三大徴候 といわれる腹痛、便秘、嘔吐などの腹部自律神経症状のほか、けいれんや四肢麻痺などの中枢神経症状、さらに高血圧や頻脈などの自律神経症状など、症状が多 彩なことからその鑑別には内科、神経科、精神科などで苦慮することが多い。他方、皮膚ポルフィリン症においては特徴的な光線過敏症を呈し、主として皮膚科 領域で診療される。 | |
5. 合併症 | |
急性ポルフィリン症では診断の遅れや不適切な治療により、約20%が呼 吸筋麻痺などで死亡するとされる。また、皮膚ポルフィリン症では光線過敏による皮膚障害、頭皮や顔貌の変化がみられ、病型により赤色歯牙をきたすものもあ る。一般に知能障害はみられず、肝障害もEPPを除いては比較的軽度である。 | |
6. 治療法 | |
ポルフィリン症にはいずれも根本的治療はなく、誘発因子の回避および対 症療法が基本となる。禁忌薬物の使用を避けるほか、ストレス、飢餓、妊娠、過剰飲酒などが誘因となる。皮膚ポルフィリン症では紫外線を避ける.発症後の治 療として、急性ポルフィリン症ではヘムアルギネート製剤が有効であるがわが国では未承認である。EPPにおける肝不全は予後不良である。 | |
7. 研究班 | |
遺伝性ポルフィリン症の全国疫学調査ならびに診断・治療法の開発に関する研究班 |