免疫系疾患分野|外胚葉形成不全免疫不全症(平成22年度)
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1. 概要 | |
NF-κBシグナルの低下により発症する疾患で、NEMO遺伝子 (IKBKG)やIκBα遺伝子が原因遺伝子として同定されているが、その大部分はNEMO遺伝子異常である。外胚葉形成不全(歯牙欠損、発汗低下、毛髪 が粗)や免疫不全症を発症し、特にヘルペス属感染症や抗酸菌感染症に対し重症化、遷延化し、死亡する例もある。また、炎症性腸疾患の合併頻度が高く、本邦 では20%以上の患者が炎症性腸疾患を発症し、短腸症候群や吸収不良症候群により発達発育不全をきたし、完全静脈栄養の必要性からQOLは著しく低下す る。一部のNEMO異常症では破骨細胞の機能低下にともない大理石病を発症する。 | |
2. 疫学 | |
現在、NEMO異常症は全世界で100名程度で、我が国で10名余名で ある。ただ、症状が多彩なため、遺伝子診断に至っていない症例もあり、その数は不明である。NEMO異常症はX連鎖劣性遺伝であるが、NEMO遺伝子が完 全に欠損した女児では、優性遺伝として色素失調症(Bloch-Sulzberger症候群)を発症する。 | |
3. 原因 | |
X連鎖型NEMO遺伝子異常症と常染色体優性遺伝IκBα遺伝子異常が あるが、いずれもNF-κBシグナル低下による細胞障害のために様々な病状を呈する。特に、外胚葉の形成不全や免疫不全症が特徴であり、腸管の形成異常の ため腸管狭窄や短腸症候群も見られる。炎症性腸疾患に関しては、ノックアウトマウスで炎症性腸炎が自然誘発されることから、NF-κBシグナル低下に伴う 腸管上皮細胞のアポトーシス亢進、腸管バリアの機能破綻等が原因と考えられている。大理石病に関しては、破骨細胞が原因であり、特に、遺伝子変異が NEMO遺伝子のZinc Fingerドメイン部位に集中していることから、他の遺伝子との関連が示唆される。 | |
4. 症状 | |
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5. 合併症 | |
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6. 治療法 | |
感染症に対する予防投薬としてのガンマグロブリン補充療法やST合剤投 与。BCG接種により重篤なBCG感染をきたすため、早期発見によるBCG接種の回避。また、感染時には速やかでかつ適切な抗菌剤の投与。炎症性腸疾患に 対してはサラゾスルファピリジン、メサラジン、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤の投与。難治の場合は抗ヒトTNFαモノクローナル抗体を考慮する。数例幹 細胞移植が行われているが、移植関連合併症や炎症性腸炎の悪化など、その効果・安全性は確立されていない。 | |
7. 研究班 | |
自然免疫異常による感染症及び難治性腸炎に関する研究班 |