筋疾患分野|筋型糖原病(平成22年度)

きんがたとうげんびょう
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1. 概要

糖原病は先天的なグリコーゲン代謝異常症であり、現在14種類の病型が 報告されている。筋型糖原病はその中で筋症状を呈するものを総称し現在12種類の報告がある。酵素発現が他臓器にもある場合は、筋症状のみならず、肝症 状、心筋症状、中枢神経症状などを合併する。診断は酵素診断が主流であるが、一部遺伝子診断も可能である。

2. 疫学

日本では不明であるが、我が国での筋型糖原病の調査ではⅡ(ポンペ 病)、Ⅲ(コーリー病)、Ⅴ型(マッカードル病)(2:1:1)が多く、この3型で70%を占めていた。ドイツでは糖原病は出生11万3千人に1人と報告 されている。台湾のデータではⅡ型は4万人に1人とされていることから考えると、主な筋型糖原病の日本全体の推計では5000~6000人程度ではないか と考えられる。

3. 原因

筋型糖原病は先天性の解糖系酵素の欠損によるもので、グリコーゲンの分 解が障害され、ATP産生の低下およびTCAサイクル、呼吸鎖への基質の供給障害、中間代謝物の蓄積を来たす。分子遺伝学的には当該酵素の責任遺伝子の変 異が報告されている。日本人ではマッカードル病の約半数で特有の好発変異(708/709delTTC)が認められている。発症病態としては(1)筋収縮 の際のエネルギー供給不全によるものと、(2)蓄積した中間代謝物(おもにグリコーゲン)による筋細胞障害とに分類できる。

4. 症状

筋型では筋症状(筋痛、運動時の易疲労感、筋力低下、横紋筋融解症)お よび心筋障害などを認める。血液検査では高CK血症を示す。発症時期は新生児期から成人期まで幅広く、新生児期発症のものでは重篤な呼吸障害などで致死的 な場合があり予後が不良な例もある。幼児期以降は筋力低下、運動時の筋痛、筋硬直、横紋筋融解症など日常のQOLが障害されることが多い。

5. 合併症

酵素発現が他臓器にもわたる場合は、それぞれの臓器障害を合併する。例 えば肝腫大、肝機能障害、心肥大、心不全、中枢神経症状(精神遅滞、けいれんなど)など。また横紋筋融解症では大量のミオグロビンが筋細胞から逸脱し、腎 尿細管障害、腎血流障害を起こし、腎不全を来たすこともある。

6. 治療法

現在根本的な治療法はないが、病態を考慮した方法として、Ⅱ型(ポンペ病)では酵素補充療法が、Ⅴ型(マッカードル病)ではビタミンB6補充療法がおこなわれている。また対症的にカルニチン、ATPなどの使用もある。日常のライフスタイルの指導なども重要である。

7. 研究班

メタボローム解析による筋型糖原病の画期的な診断スクリーニング法の確立と治療推進の研究班