呼吸器系疾患分野|肺胞蛋白症(平成22年度)

はいほうたんぱくしょう
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1. 概要

肺胞蛋白症(PAP)は1958年Rosenらにより記載され、我が国 では1960年岡らによって紹介された稀少肺疾患である。肺胞蛋白症はサーファクタントの生成または分解過程に障害があり、そのことが原因で肺胞腔内、終 末細気管支内にサーファクタント由来物質の異常貯留を来す疾患の総称である。

2. 疫学

PAPは自己免疫性PAP、続発性PAP、先天性PAP、未分類PAP に分類される。それぞれ頻度は90%、9%、1%以下,極めてまれ、と推定。我が国の自己免疫性PAP有病率は6人/1,000,000人(Am J Respir Crit Care Med, 177:752, 2008)として、自己免疫性PAPは日本で約700~800人と推定される。続発性PAP、先天性PAPの精確な罹患率のデータは不明。PAP全体とし て多く見積もっても1000人程度と推定される。

3. 原因

自己免疫性PAPでは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子 granulocyte/macrophage colony-stimulating factor (GM-CSF)に対する中和自己抗体が存在し、肺胞マクロファージ、好中球の機能障害が病態に関与する。続発性PAPは骨髄異形性などの血液疾患、粉塵 やガスの吸入、感染症、リジン尿性蛋白不耐症等、ベーチェット病等で認められる。先天性PAPはsurfactant protein (SP)-B, SP-C、ABCA3 transporter 遺伝子の異常やGM-CSFレセプターの異常が報告されている。

4. 症状

自己免疫性PAPの男女比は2:1、診断時年齢の中央値は男女ともに 51才であった。症状は労作時呼吸困難(40%)、咳(10%)、喀痰、体重減少、発熱など。約30%の患者は無症状である。画像所見の割に症状が比較的 軽微であることが本疾患の特徴である。続発性では原疾患の症状に加えてPAPの呼吸器症状が加わる。先天性は重篤な場合が多い。

5. 合併症

自己免疫性PAP212名の調査では、6%に感染症(肺アスペルギルス 症、非結核性抗酸菌症、肺結核、肺炎、)、1.9%に悪性疾患、1.4%に自己免疫疾患、1.4%に肺線維症を合併していた(Am J Respir Crit Care Med, 177:752, 2008)。続発性PAPでは原疾患の合併症が加わる。

6. 治療法

自己免疫性PAPは、洗浄療法(全肺洗浄)が行われる。試験的治療とし てGM-CSF吸入、GM-CSF皮下注も試みられている。続発性PAPは基礎疾患の治療、あるいは、洗浄療法(全肺洗浄あるいは区域洗浄)を行う。骨髄 異形成症候群に伴う続発性PAPで骨髄移植によりPAPも改善したとの報告がある。先天性PAPは、対症療法等行うも予後は不良である。

7. 研究班

肺胞蛋白症の難治化要因の解明、診断、治療、管理の標準化と指針の確立研究班