耳鼻科疾患分野|ステロイド依存性感音難聴(平成22年度)
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1. 概要 | |
ステロイド依存性感音難聴は免疫異常に関連した両側進行性難聴と考えら れており、一定量の副腎皮質ステロイドの投与を行わないと聴力を維持することができずに、高度から重度の難聴が進行する疾患である。既に我が国において は、平成5年度厚生省特定疾患急性高度感音難聴調査研究班によって提案されたステロイド依存性感音難聴の診断基準(案)は存在するが、実際に副腎皮質ステ ロイドを長期投与することで診断を行うため、耳鼻科医が本疾患を念頭において治療を行わないと診断がつかず、患者数の把握ができない欠点がある。以下に従 来の診断基準(案)を示す。 副腎皮質ステロイド(もしくはその他の免疫抑制剤)の投与に対応、あるいは依存して聴力が変動するもので、1)聴力の悪化時、副腎皮質ステロイドを投与す ることにより聴力が改善し、副腎皮質ステロイド投与中止後に聴力が悪化するが、再投与で再び改善するもの、もしくは、2)副腎皮質ステロイドの減量中、あ るいは持続投与中に聴力が悪化するが、副腎皮質ステロイドの増量によって改善するもの。 | |
2. 疫学 | |
平成5年疫学調査(厚生省特定疾患急性高度感音難聴調査研究班)によると、免疫異常に伴う難聴は年間 200例発生すると報告されており、少なくともこれらの一部がステロイド依存性感音難聴に相当するものと考えられる。 | |
3. 原因 | |
副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤の投与によって聴力が改善すること、免 疫異常を示す疾患にも、副腎皮質ステロイドの投与に依存して聴力の変動を生じるものがあることから、難聴の原因には何らかの免疫異常が関係していると考え られている。しかしながら、実際に本疾患が免疫異常によるものか否かは、いまだ証明されておらず、真の原因は不明である。 | |
4. 症状 | |
原因不明の変動性の両側性感音難聴を示すが、聴力の変動は必ずしも両側 同時には生じず、異時性に生じることもある。突然に難聴を生じることも多く,突発性難聴と診断されて、副腎皮質ステロイドの投与を受けることで聴力が一時 的に改善するが、突発性難聴と異なり、副腎皮質ステロイドの投与量を漸減していくと聴力が再度悪化し、副腎皮質ステロイドの投与量を増量すると、再度聴力 が改善するといった臨床経過から、本疾患が疑われることが多い。耳鳴を伴うことが多く、めまいを生じることもある。 | |
5. 合併症 | |
大動脈炎症候群をはじめとする自己免疫疾患に伴って、本疾患が生じることもあるため、それぞれ合併する自己免疫疾患の症状を合併する症例もある。 | |
6. 治療法 | |
聴力低下に対して副腎皮質ステロイドの投与を行う(体重1 kg あたり0.5~1mg)。聴力が改善するようであれば、数日かけて徐々に副腎皮質ステロイドを減量していき、維持量を決める。状況によって、ビタミン B12や循環改善剤を併用する。当初、副腎皮質ステロイドで反応していたもののうち、聴力低下を繰り返すと反応が不良になる場合がある。このような時には 免疫抑制剤を投与することもある。 | |
7. 研究班 | |
ステロイド依存性感音難聴研究班 |