多発性嚢胞腎(指定難病67)

たはつせいのうほうじん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「多発性嚢胞腎」とはどのような病気ですか

腎臓に嚢胞(水がたまった袋)がたくさんできて腎臓の働きが徐々に低下していく、遺伝性の病気です。末期腎不全へと進行した際は、透析や腎臓移植など、腎代替療法と呼ばれる治療が必要です。常染色体顕性多発性嚢胞腎(Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease:ADPKD)と常染色体潜性多発性嚢胞腎(Autosomal Recessive Polycystic Kidney Disease:ARPKD)とがあります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

わが国の患者数は約31,000人と推定されています。ARPKDはわが国の正確な患者数は不明ですが、欧米の報告では出生1万~4万人につき1人と考えられています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

多くのADPKD患者さんは成人になってから症状がでます。多くのARPKD患者さんは重症で新生児期から症状がみられると考えられていますが、近年では軽症例も多く認められるようになり、いかなる年齢で発見されてもおかしくありません。地域差、男女差はありません。

4. この病気の原因はわかっているのですか

ADPKDは遺伝子(PKD1PKD2)の変異、ARPKDは遺伝子(PKHD1)の変異が原因です。

5. この病気は遺伝するのですか

遺伝します。ADPKDでは多くの場合、両親どちらかからの遺伝によりこの病気になります。両親に病気がなくても、患者さんが生まれるときに遺伝子の突然変異が起きることにより病気になることもあります。ARPKDでは、多くの場合両親が原因となる遺伝子の変異を有しており、それらが合わさるために発症します。通常、両親は無症状です。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

ADPKDは、初期には無症状です。しかし、徐々に腎臓の嚢胞が増えて腎臓全体が大きくなり、お腹が張ってくることがあります。血尿が認められたり、嚢胞に感染が起こることもあります。また肝臓にも嚢胞ができてお腹が張ってくることもあります。その他、全身の合併症として、高血圧や脳動脈瘤(クモ膜下出血)が一般の方より高い頻度で起こります。ARPKDでは、典型例では腎機能が低下し、しばしば透析や腎臓の移植が必要になります。最も重症な患者さんでは、出生前から腎機能が低下し、尿量が少なくなります。それが原因で肺が未熟で小さい肺低形成という状態になると、生命の維持が困難となることがあります。また、高血圧がしばしばみられます。肝臓の構造異常を合併するため、胆管炎、門脈圧亢進症、食道静脈瘤、血小板減少などがみられることがあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

ADPKDに対しては、尿を濃縮するホルモンであるバソプレシンのV2受容体拮抗薬(トルバプタン)が、腎臓の嚢胞が大きくなることを防ぎ、腎臓の働きの低下を抑える効果が見込まれます。ARPKDでは現在のところ、病気を完全に治せる治療法(根治的療法)はありません。腎機能障害の程度に合わせた治療を行い、末期腎不全へと進行した際は、腎代替療法を行います。また、肝移植が必要になる場合もあります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

ADPKDは、徐々に腎機能が低下し腎不全となり、透析治療や腎移植治療が必要となります。60歳頃までに約50%の人が腎不全になると言われています。ARPKDでは、主に重症の肺低形成が原因で生後1か月以内に亡くなる場合があります。生後1か月を過ぎると長期生存が可能となり、その場合、末期腎不全への進行するのは、生後5年で14%、10年で29%、20年で58%との報告があります。腎機能障害や肝臓に関連する症状の状態や程度によって様々な経過をたどります。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

ADPKDでは、脱水によるバソプレシンが嚢胞を大きくし、病気の進行を速めることになるので、適切な水分摂取の習慣はとても大事なことです。ARPKDでもなるべく腎臓に負担をかけないように、脱水症にならなにように適切な水分摂取を行うことが大事です。また、高血圧や肥満も病気の進行に関わるので、早くから注意が必要です。塩分制限が重要と考えられます。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

該当する病名はありません。

11. この病気に関する資料・関連リンク

患者さんとご家族のための多発性嚢胞腎(PKD)療養ガイド2019
 Minds ガイドラインライブラリHPのトップページで検索してください。
https://minds.jcqhc.or.jp/
患者向け小冊子「まんがで知る 多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)」
https://jsn.or.jp/jsn_new/news/PKD_manga.pdf

 

情報提供者
研究班名 難治性腎障害に関する調査研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年1月(名簿更新:令和6年6月)