クリオピリン関連周期熱症候群(指定難病106)

クリオピリンかんれんしゅうきねつしょうこうぐん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
1.概要
クリオピリン(Cryopyrin)の機能異常により、インフラマソーム(inflammasome)を介したプロカスパーゼ-1(procaspase-1)の活性化によるIL-1βの過剰産生を基本病態とする疾患である。軽症型の家族性寒冷自己炎症性症候群(Familial cold autoinflammatorysyndrome:FCAS)、中等症のマックル・ウェルズ症候群(Mucke-Wells syndrome:MWS)、重症型の慢性乳児神経皮膚関節症候群(Chronic infantile neurologic cutaneous, and articular syndrome:CINCA症候群)/新生児期発症多臓器系炎症性疾患(Neonatal onset multisystem inflammatory disease:NOMID)の3病型に分類されるが、明確に病型を区別できない場合もある。
日本における推定患者数は100人程度である。孤発例が多いが、家族例の報告も増えている。発症における男女差はない。
 
2.原因
常染色体優性遺伝形式をとり、炎症性サイトカインIL-1βの活性化を制御するNLRP3遺伝子の機能獲得変異により発症する。重症型のCINCA症候群/NOMIDでは大部分の患者が孤発例であり、その約3分の1は体細胞モザイクで発症している。
 
3.症状
軽症の家族性寒冷自己炎症性症候群では、寒冷によって誘発される、発疹、関節痛を伴う間欠的な発熱を特徴とする。出生直後から10歳くらいまでに発症する。症状は24時間以内に軽快する。発疹は蕁麻疹に類似しているが、皮膚生検では好中球の浸潤が主体である。中等症のマックル・ウェルズ症候群では、蕁麻疹様皮疹を伴う発熱が24~48時間持続し数週間周期で繰り返す。関節炎、感音性難聴、腎アミロイドーシスなどを合併する。中枢神経系の症状や骨変形は来さない。重症のCINCA症候群/NOMIDでは皮疹、中枢神経系病変、関節症状を3主徴とし、これらの症状が生後すぐに出現し、生涯にわたり持続する。発熱、感音性難聴、慢性髄膜炎、水頭症、ブドウ膜炎、全身のアミロイドーシスなど多彩な症状がみられる。
 
4.治療法
有効な治療として国内で使用可能なものはカナキヌマブ(イラリス®)である。基本的には、マックル・ウェルズ症候群、CINCA症候群/NOMIDがカナキヌマブ(イラリス®)による治療の対象となる。家族性寒冷自己炎症性症候群は軽症例では有症状時にNSAIDSとステロイド短期投与でも治療可能であるが、発作頻度や症状の強い例、アミロイドーシスのリスクのある症例ではカナキヌマブ(イラリス®)の導入を考慮する。
 
5.予後
合併症として、中枢神経炎症による水頭症、知能低下、関節病変による拘縮・変形などを認め、重症例では寝たきりとなる。持続的な全身炎症に伴う続発性アミロイドーシスがしばしば合併し、予後不良因子となる。
○ 要件の判定に必要な事項
1.患者数
約100人(研究班による)
2.発病の機構
不明(NLRP3遺伝子異常が示唆されている。)
3.効果的な治療方法
未確立
4.長期の療養
必要(持続的な全身炎症に伴う続発性アミロイドーシスを合併。重症例では寝たきり。)
5.診断基準
あり(研究班作成の診断基準等あり。)
6.重症度分類
重症度に応じて、軽症型の家族性寒冷自己炎症性症候群、中等症のマックル・ウェルズ症候群、重症型のCINCA症候群/NOMID、の3病型に分類され、中等症以上を対象とする。
 
○ 情報提供元
「自己炎症疾患とその類縁疾患に対する新規診療基盤の確立」研究班
研究代表者 京都大学大学院医学研究科 発達小児科 教授 平家俊男
 
 
 
<診断基準>
以下の①ないし②を満たした患者をクリオピリン関連周期熱症候群と診断する。NLRP3遺伝子検査は必須検査とする。
NLRP3遺伝子に疾患関連変異を認める。
NLRP3遺伝子に疾患関連変異が同定されないが、以下のa) b)2項目のいずれも認める。
a) 乳児期発症の持続性の炎症所見
b) 骨幹端過形成、蕁麻疹様皮疹、中枢神経症状(うっ血乳頭、髄液細胞増多、感音性難聴のいずれか)の3項目のうち2項目を満たす。
 
(診断の手順についての補足)
典型的な臨床症状よりクリオピリン関連周期熱症候群を疑い、NLRP3遺伝子検査にて確定診断する。ただし、一部患者にNLRP3疾患関連変異が認められない事が知られており、NLRP3疾患関連変異陰性例でも②を満たす場合はクリオピリン関連周期熱症候群と診断する。
なお遺伝子検査はNLRP3モザイク検査まで含めて行う。
 
 
<重症度分類>
中等症以上を対象とする。
 
・      軽症 家族性寒冷自己炎症症候群
寒冷によって誘発される、発疹、関節痛を伴う間欠的な発熱を特徴とする疾患である。出生直後から10歳くらいまでに発症する。症状は24時間以内に軽快する。発疹は蕁麻疹に類似しているが、皮膚生検では好中球の浸潤が主体である。


・      中等症 マックル・ウェルズ症候群
蕁麻疹様皮疹を伴う発熱が24~48時間持続し数週間周期で繰り返す。関節炎、感音性難聴、腎アミロイドーシスなどを合併する。中枢神経系の症状や骨変形はきたさない。
 
・      重症 CINCA症候群/NOMID
皮疹、中枢神経系病変、関節症状を3主徴とし、これらの症状が生後すぐに出現し、生涯にわたり持続する自己炎症性疾患である。発熱、感音性難聴、慢性髄膜炎、水頭症、ブドウ膜炎、全身のアミロイドーシスなど多彩な症状がみられる。
 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
 

平成27年1月1日

情報提供者
研究班名 自己炎症性疾患とその類縁疾患における、移行期医療を含めた診療体制整備、患者登録推進、全国疫学調査に基づく診療ガイドライン構築に関する研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和4年3月(名簿更新:令和6年6月)