ギャロウェイ・モワト症候群(指定難病219)

ぎゃろうぇいもわとしょうこうぐん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
ギャロウェイ・モワト(Galloway-Mowat)症候群は、腎糸球体硬化症(ネフローゼ)、小頭症(てんかん、精神運動遅滞)を2主徴とし、顔面・四肢奇形を合併する症候群である。
 
2.原因
腎糸球体上皮細胞と中枢神経ニューロンに共通する細胞機能障害(細胞分裂、接着、遊走、等)があり、腎糸球体と脳の器官形成プロセスに異常を来すと推測される。原因となる染色体異常や遺伝子変異は、見つかっていない。研究班では収集した20家系についてエクソーム解析を行い、原因変異を探索中である。
 
3.症状
腎障害(蛋白尿)と中枢神経障害(てんかん・精神運動遅滞)の二つが診断に必須である。典型的な重症例では、出生早期から大量の蛋白尿(ネフローゼ症候群)を来たし、腎不全に進展する。また大脳皮質形成異常や小脳低形成を伴う小頭症があり、難治性てんかんを呈する。一方、腎障害(蛋白尿)、小頭症(てんかん・発達遅滞)の程度が軽く、比較的良好な経過で成人に達する軽症例も見られる。
さまざまな外表奇形を伴うが、障害部位や程度は症例により様々で疾患特異的なものはない。顔面形態異常(前額狭小化、大きく柔らかい後方回転の耳、耳介低位、小下顎、高口蓋、眼間開離)や四肢奇形(くも状指、屈指、母指偏位)を伴う。一般に筋緊張低下があり、斜視、食道裂孔ヘルニアの合併が見られる。
 
4.治療法
対症療法を主体とする。ネフローゼ症候群に対しては、免疫抑制療法を試みるが、大部分が治療に抵抗性で末期腎不全に進行する。腎不全に対しては、腹膜透析や腎移植が行われる。てんかんについては、長期の薬物療法が必要となる。
 
5.予後
3か月までに発症する早期発症の重症型では、重積てんかんによる精神遅滞や腎機能障害が進行して1~2歳までに死亡することが多い。
 
 
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.患者数
約200人
2.発病の機構
不明 (劣性遺伝子の変異が疑われるが、同定されていない。)
3.効果的な治療方法
未確立(てんかんには薬剤療法、腎不全には腎移植、腹膜透析など腎代替療法。)
4.長期の療養
必要(進行性で、てんかん・精神運動遅滞を伴う腎不全となるため。)
5.診断基準
あり (研究班作成の診断基準あり)
6.重症度分類
必要となる治療に応じて、重、中、軽症の3段階に分類し、重症を対象とする。
 
○ 情報提供元
「腎・泌尿器系の希少難治性疾患群に関する調査研究」
研究代表者 神戸大学 小児科学 教授 飯島一誠
 
 
 
 
<診断基準>
 
主症状2項目を両方満たし、かつ副症状1項目以上を有し、さらに鑑別疾患を除外したものを、ギャロウェイ・モワト症候群と診断する。
 
主症状
1.  中枢神経症状 (難治性てんかん 精神運動遅滞)
典型例では小頭症(頭囲が性別・年齢平均値に比し、-2SDより小さい)を伴う。理学的に小頭症がなくてもCT・MRIで、脳皮質形成異常(脳回異常、白質髄鞘形成不全)や小脳低形成を認める。
2.  腎障害(糸球体硬化症)
典型例では出生3か月までに、ネフローゼ症候群(高度蛋白尿(夜間蓄尿で40mg/hr/m2以上)又は早朝尿で尿蛋白クレアチニン比2.0g/gCr以上、かつ低アルブミン血症(血清アルブミン2.5g/dL以下))を呈する。1~3歳頃からネフローゼが顕性化する軽症例では、まずてんかん症状が先行している場合がある。腎障害は進行して腎不全に至ることが多いが、末期に至る年齢は3~10歳あるいはそれ以降までと幅が広い。腎機能が成人期まで保たれ、尿蛋白が中等度(試験紙法>2+、一日蛋白尿0.5g/日)にとどまることもある。腎生検では巣状分節性糸球体硬化症を示すことが多い。
 
副症状 下記の幾つかを、主症状と合併する。
1.  外表奇形
顔面形成異常(前額狭小化、大きくて柔らかい耳、耳介低位、小下顎、高口蓋、眼間開離)
四肢奇形(くも状指、屈指)
2.  筋症状
筋症状(四肢緊張低下、内斜視)
食道裂孔ヘルニア
 
鑑別診断 先天性糖鎖異常(congenital disorders of glycosylation)、ミトコンドリア呼吸鎖異常(mitochondria cytopathy)、ペルオキシソーム(Peroxisome)脂質代謝異常、アミノ酸代謝異常、糖代謝異常(糖原病、ガラクトース血症)、感染症(TORCH)
 
 
 
<重症度分類>
重症を対象とする。
 
重症
下記 臓器区分A、B-1、B-2のいずれに該当する場合(断続的な場合も含めて概ね6か月以上)。
 
臓器区分A:腎:CKD重症度分類ヒートマップが赤の部分の場合。
CKD重症度分類ヒートマップ

 

 

臓器区分B:中枢神経障害(脳皮質形成異常)

B-1

難治性てんかん
主な抗てんかん薬2~3種類以上の単剤あるいは多剤併用で、かつ十分量で、2年以上治療しても、発作が1年以上抑制されず日常生活に支障を来す状態。
(日本神経学会による定義)

B-2

精神運動発達遅滞、神経症状が下記のいずれかを満たす。               
a.軽度障害(目安として、IQ70未満や補助具などを用いた自立歩行が可能な程度の障害)
b.中程度障害(目安として、IQ50未満や自立歩行が不可能な程度の障害)   
c.高度障害(目安として、IQ35未満やほぼ寝たきりの状態)    
 (日本先天性代謝異常学会による定義)

 
中等症
上記を満たさない、あるいは、一時的に満たしても治療が継続的には必要で無い場合。
軽症
上記治療が不要な場合。
 
 
 
 
 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
 

平成27年7月1日

情報提供者
研究班名 小児腎領域の希少・難治性疾患群の全国診療・研究体制の構築班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和6年1月(名簿更新:令和6年6月)