タナトフォリック骨異形成症(指定難病275)
1. 「タナトフォリック骨異形成症」とはどのような病気ですか
重症の四肢骨の短縮による低身長や肋骨の短縮による呼吸障害を示す 先天性 の骨の病気(骨系統疾患)です。以前は出生後早期に死亡することが多かったため、致死性骨 異形成 症と呼ばれていました。現在は人工呼吸等の呼吸管理の進歩で長期生存も可能になっていますが、重度の精神的身体的な発達障害を示します。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
全国で100人程度と推定されています。出生数では2~5万分娩に1人程度とされていますが、出生されても呼吸管理を行わないと早期(出生後一週間以内)に亡くなることが多いです。
3. この病気はどのような人に多いのですか
健常なご夫婦から突発的に病気のお子さんが生まれます。病気のなりやすさに特定の傾向はありません。父親が高年齢になるほど生まれる確率が高くなるという報告がありますが、大きく影響するものではありません。
4. この病気の原因はわかっているのですか
線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)遺伝子の変異により発症します。変異した遺伝子を持っていない健常な両親から、突発的に遺伝子の変異が生じて胎児(受精卵)の段階で発症します
5. この病気は遺伝するのですか
FGFR3遺伝子の変異による病気で常染色体顕性遺伝(優性遺伝)という遺伝性疾患に分類されます。しかし患者さん自身は遺伝子の変異を持っていますが、その両親は健常で遺伝子の変異を持っていないことから、FGFR3遺伝子の変異は突発的に生じたものであり、両親からの遺伝で発症したわけではありません。また患者さんはその子供に50%の確率で遺伝して発症しますが、実際には患者さん自身の妊娠は難しいことから、遺伝として発症することはないと考えられます。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
著明な四肢長管骨の短縮を認め、特に大腿骨や上腕骨に著しい所見を示します。頭蓋骨は比較的大きくなり、前頭部の突出と鼻根部の陥凹が目立ちます。胸郭は低形成でこれによる呼吸不全症状を示します。また 腹部膨満 と相対的な皮膚過剰による四肢皮膚のしわなどが特徴です。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
呼吸障害に対して、酸素投与や人工呼吸を行う等の対症療法のみです。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
出生後は呼吸不全のため、呼吸管理を行わない限り、早期に死亡することが多いですが、呼吸管理を行った場合には、長期生存することが報告されています。長期生存した場合には重度の精神的身体的な発達障害を示します。
9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
呼吸障害は直接的に生命に関わります。低酸素状態になると脳の障害が悪化しますので、早めの酸素投与や気管切開による人工呼吸が望ましいです。
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
致死性骨異形成症
11. この病気に関する資料・関連リンク
厚生労働科学研究班
https://www.osteochondrodysplasia.com/
小児慢性特定疾病情報センター タナトフォリック骨異形成症
https://www.shouman.jp/disease/details/15_02_004/
全国調査結果報告論文
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31247124/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34597445/