化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群(指定難病269)
○ 概要
1.概要
PSTPIP1(proline-serine-threonine phosphatase interacting protein 1(CD2-binding protein 1:CD2BP1))の機能獲得型変異により発症する自己炎症性疾患である。若年で発症し、進行性のびらん性関節炎及び、難治性の皮膚症状(壊疽性膿皮症様病変、嚢胞性座瘡)を伴う。
2.原因
PSTPIP1(CD2BP1)の機能獲得型変異により常染色体優性遺伝形式にて発症するが、その詳しいメカニズムは明らかになっていない。
3.症状
3歳以下に進行性の化膿性無菌性関節炎として発症し、思春期以降に壊疽性膿皮症様病変、嚢腫性ざ瘡(膿疱が目立ちしこりを形成するざ瘡)を呈する。関節炎は再発性、無菌性で、関節腔内には好中球が優位に存在する。壊疽性膿皮症様病変は、炎症性の紅色丘疹、膿疱、結節ではじまり、その後潰瘍化して急速に拡大し、潰瘍底は壊死を起こす。潰瘍が融合し、しばしば蜂巣状又は篩状の瘢痕を生じる。
4.治療法
根治的治療が存在しないが、対症療法として非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド、免疫抑制剤や生物学的製剤などが使用されている。
5.予後
生命予後は比較的良好であるが、脾腫、溶血性貧血、血小板減少などの血液疾患、炎症性腸疾患、ブドウ膜炎などの炎症疾患、糸球体腎炎、糖尿病など、様々な慢性疾患の合併が報告されている。
○ 要件の判定に必要な事項
1. 患者数
約100人未満
2. 発病の機構
不明(PSTPIP1(CD2BP1)の機能獲得型変異)
3. 効果的な治療方法
未確立
4. 長期の療養
必要
5. 診断基準
あり(研究班作成の診断基準あり。)
6. 重症度分類
下記の(1)、(2)、(3)のいずれかを満たした場合を対象とする。
(1)活動性関節炎発症例
(2)壊疽性膿皮症様病変・嚢腫性ざ瘡発症例
(3)合併症併発例
○ 情報提供元
「自己炎症疾患とその類縁疾患に対する新規診療基盤の確立」
研究代表者 京都大学大学院医学研究科発達小児科 教授 平家俊男
<診断基準>
診断方法
化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群(PAPA症候群)の診断基準:
下記①、②の症状はPAPA症候群に特徴的である。
①幼児期に発症する反復性の化膿性無菌性関節炎*
②思春期前後より認められる壊疽性膿皮症や重症囊腫性ざ瘡**
*関節炎は外傷により惹起される事がある。
**初期には、ワクチン接種等の際に注射部位に膿疱ができる過敏反応(pathergy)も参考になる。
<診断のカテゴリー>
上記①又は②を認めた場合、PSTPIP1遺伝子解析を施行し、疾患関連変異を有する症例を化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群と診断する。
<重症度分類>
下記の(1)、(2)、(3)のいずれかを満たした場合を対象とする。
(1)活動性関節炎発症例
関節炎による疼痛の持続、又は関節破壊・拘縮の進行がみられる。なお、関節炎の診断は単純レントゲン検査、関節エコー又はMRI検査により確認する。
(2)壊疽性膿皮症様病変・嚢腫性ざ瘡発症例
(3)合併症併発例
当該疾患が原因となり、血液疾患(脾腫、溶血性貧血、血小板減少)、炎症性疾患(炎症性腸疾患、ブドウ膜炎)、糸球体腎炎、糖尿病を合併した例
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
研究班名 | 自己炎症性疾患とその類縁疾患における、移行期医療を含めた診療体制整備、患者登録推進、全国疫学調査に基づく診療ガイドライン構築に関する研究班 研究班名簿 |
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情報更新日 | 令和5年11月(名簿更新:令和6年6月) |