好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(指定難病45)
こうさんきゅうせいたはつけっかんえんせいにくげしゅしょう
- 国際的に論文などで発表する場合は、今まではWattsのアルゴリズム(Lanham基準または米国リウマチ学会の分類基準を満足したもの)による分類基準を使用すべきでしたが、昨年DCVASによる新たな分類基準が提唱されましたので、今後はこの新基準を用いることになると思われます。ただし、国内での日常臨床では、指定難病の申請時には厚生労働省の診断基準と重症度分類を用いて判定されますので、厚労省の基準を使用してください。
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の分類基準が海外と国内では異なっていますが、どちらを使用するべきでしょうか?
- Lanhamの基準を使用すれば喘息は必須ですが、米国リウマチ学会の基準や厚生労働省の基準では、喘息がなくても分類・診断できます。ただし、典型的な喘息症状が無い場合でも、咳や息切れなどの症状、閉塞性肺機能障害、好酸球性気道炎症(呼気NO濃度や喀痰好酸球数の増加)をほとんどの例で認めます。
喘息の既往/合併がない場合も好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の診断は可能ですか?
- ANCA陽性のEGPAと陰性例では、遺伝的背景、臨床像が異なっています。分類基準は満足しても、ANCAが陰性で、病理組織所見で明らかな血管炎像が見られない例では、特発性好酸球増多症である可能性があり、ANCA関連血管炎とは言えない場合があります。病理組織所見で血管炎所見があれば、ANCA陰性でもEGPAの可能性が高くなります。病理学的診断に迷う場合には、血管炎病理診断コンサルテーション(https://www.vas-mhlw.org/html/consultation/index.html)を活用してください。
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症ではANCAの陽性率が50%程度ですが、ANCA陰性例でもANCA関連血管炎と言ってよいのでしょうか?
- 本症に特化した寛解の明確な定義はありません。最近ANCA関連血管炎の寛解基準として「BVAS=0」が使用されております(Mohammad AJ, et al.: N Engl J Med 2014)。さらに併用しているステロイド量を加味した基準(プレドニゾロン換算4mg/日以下)が代表的な臨床試験であるMIRRA試験(Wechsler ME et al. N Engl J Med 376(20):1921-1932, 2017)で採用されており、BVAS=0に加えてこれを満足する場合を「寛解」とするのが当面は良いと思われます。
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の寛解はどのように定義されていますか?
- 本症では、好酸球数の増加とそれに伴う臨床症状(喘息、発熱など全身症状、虚血性腸炎を示唆する腹痛、末梢神経障害によるしびれなど)の出現・悪化があれば再燃が強く疑われます。ANCA陽性例では血清のMPO-ANCAの力価の上昇は参考になります。その他、非特異的ですが血清CRPやIgEの上昇も活動性を示唆します。個々の症状や検査項目ではなく、これらの所見を組み合わせて総合的に再燃を判断する必要があります。
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の再燃の指標としては何がよいですか?
- シクロホスファミドの点滴静注は、6回よりも12回の方で再燃が少なく、安全性には差がなかった、という報告もあり(Arthritis Rheum 57: 686-693, 2007)、病気のコントロールが難しいと予想される活動性の高い患者では、治療反応性、安全性を見ながら繰り返し実施することは可能であり、6回以上行うことが必要な場合もあります。 しかしシクロホスファミドの長期使用は不妊症、二次性発ガンのリスクがあり、また心毒性も懸念されるため、総投与量は10〜15g程度までにとどめることが望ましいです。
再燃時には、シクロホスファミドの点滴静注を何度でも使えますか?