特定疾患患者の自立支援体制の確立に関する研究

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本研究班は、平成14-16年度に実施された難治性疾患克服研究事業「特定疾患患者の地域支援体制の構築に関する研究」(主任研究者:木村 格)の流れを受け継ぎ、平成17年度から新たに創設されました。本研究班の班名である自立支援体制の“自立”とは「Independent Living (IL:自立生活)と「Autonomy(自律)」の2つの意味を意識して使用しております。ILは、1960年代にカリフォルニアの障害者運動として起こり、その後世界中に広まったもので、「重度の障害者が、介護者や舗装具などを用いながらも、心理的に開放された責任ある個人として主体的に生きる」こととされています。
Autonomy(自律)は、Joseph Razの定義によると、“The autonomous person is a (part) author of his own life.” 「自律した人は、自分自身の人生の著者である」 という記載があります。すなわち、困難な状況であっても、自らの人生を切り開いていくパワーと自己管理能力を持っていることであると思われます。

この2つの“じりつ”を意識し、医療処置を受けている特定疾患患者であっても、福祉・保健の連携の下、地域社会の中で、生きがいをもち、普通に生きていくための効率的な自立支援体制を確立していくことを理念として
(1)難病相談支援センターへの支援方法の検討
(2)療養環境整備
(3)就労支援
の3つのサポートを中心に研究を推進しています。

難病を患った患者様やご家族の相談窓口として各県に難病相談支援センターが設置され、相談員が対応しています。難病と診断を受け精神的に動揺している相談者もいれば、生活上の悩みを抱えている方もいらっしゃいます。相談員は多様な相談を受ける知識と能力が求められます。本研究班では、心理療法の専門家やソーシャルワーカーを中心としたワーキンググループを作り、全国の難病相談支援センターの相談員の相談技術向上をめざすにはどのような方法が良いのか検討してきました。相談員へのアンケートを実施して相談員が求めているサポートの内容を調査するとともに、難病相談支援センターの相談内容と対応の記録の標準化を行うためのフォーマット(電子相談票)を作成しました。また、アンケートから希望が多かった相談内容に答えるためのQ&A集の作成に取り組んでいます。

難病の患者様は、病気の進行とともに様々な医療処置を受けるようになることもまれではありません。胃から栄養を注入したり、気管切開などの医療処置をしている難病患者様は多くのケアを必要とします。在宅療養中の患者様の支援として福祉施設のサービス利用が提供されていますが、医療処置を行うとその利用が難しい現状があり、介護されているご家族の負担が問題となっています。研究班では、ご家族の介護負担軽減のために、難病患者の福祉施設の利用や療養環境を改善するための検討を行っています。また、気管切開部からの吸引ができるようにヘルパーを養成する解説ビデオ作成に取り組んでいます。

難病患者が真に“じりつ”していくためには、就労していくことが必要です。各地の難病相談支援センターが、厚労省のモデル事業の成果でハローワーク等と協働して、就労支援を行うようになってきています。研究班として、難病相談支援センターの相談員が就労相談に利用できるように、「難病・慢性疾患のある人の就業について」と題した就労支援パンフレットを作成しました。また全国の難病相談支援センターの実践例から、就労支援成功例集を作成しに取り組んでいます。