高プロリン血症(平成21年度)

こうぷろりんけっしょう
研究班名簿 一覧へ戻る

1. 概要

遺伝性高プロリン血症は1型と2型の2つのタイプに分類されている。いずれも常染色体劣性遺伝性でプロリン代謝経路に異常があり血 中のプロリンが上昇する。1型ではプロリン酸化酵素の異常、2型ではP5C脱水素酵素の異常が判明している。症状は難治性のけいれんや精神発達の遅れを示 す症例があるが、臨床症状を全く示さない例もあり、不明な点も多い。

2. 疫学

不明(典型例は日本に数名)

3. 原因

プロリンはミトコンドリア膜に存在するプロリン酸化酵素によって酸化され、その結果P5Cが生成される。高プロリン血症1型では、 このプロリン分解の最初の段階が障害されている。一方、高プロリン血症2型ではP5CがP5C脱水素酵素によってグルタミン酸へ代謝される経路が障害され る。両酵素ともに遺伝子が同定され、遺伝形式は常染色体劣性である。患者における変異も報告されている。

4. 症状

1型高プロリン血症の症状は報告によって一定していない。難治性のけいれんや精神発達の遅れを示す症例があるが、臨床症状を全く示 さない報告もある。男児においては神経学的異常を呈する可能性が高い。2型高プロリン血症でも難治性のけいれんや精神発達の遅れを示す症例と臨床症状を全 く示さない報告がある。プロリン代謝異常と臨床症状との関連は不明な点が多く今後の課題である。

5. 合併症

精神発達遅滞、てんかんが主な合併症である。また、統合失調症と血中プロリン高値との相関が指摘されている。さらに22q11.2 欠失症候群において、プロリン酸化酵素遺伝子領域も含まれるため、血中プロリン値高値をきたし、22q11.2欠失症候群の臨床像に影響を与えている可能 性がある。

6. 治療法

プロリン制限食が試みられているが、効果は不明である。臨床症状とプロリン代謝との関連が不明であること、特に血中プロリン値と臨床症状の関係が明らかでないことから、食事療法は必要ないとする意見が多い。

7. 研究班

高プロリン血症の臨床的多様性の解明と新しい診断基準及び長期フォローアップ体制の確立