長鎖脂肪酸代謝異常症(平成21年度)
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1. 概要 | |
脂肪は空腹・飢餓時に糖に代わるエネルギーとして利用される。従って長鎖脂肪酸代謝異常症は、空腹・飢餓時に突然発症することが多 く、極端な場合はライ症候群や乳児突然死症候群として発症する。診断後は、L-カルニチンの補充や、空腹を避けるなどの簡単な生活指導により無症状に経過 する者も多く、最近はマス・スクリーニング対象疾患にも組み入れられており、発症前に見つかった患者さんの多くは良好な経過をたどっている。 | |
2. 疫学 | |
日本において毎年10-50人の新患が発生 | |
3. 原因の解明 | |
長鎖脂肪酸の転送・活性化に関わる酵素・蛋白群(カルニチンサイクル異常症)に始まり、各々長鎖・中鎖のβ酸化スパイラルの各段階 を触媒する酵素群、電子伝達に関与する蛋白群、ケトン体生成に関わる酵素群まで含めると、その疾患数は20種類以上に及び、現在もなお新しい原因酵素の発 見が続いている。 | |
4. 主な症状 | |
(1) 全身のエネルギー産生障害に起因する症状・所見 | |
(1) 低ケトン性低血糖、(2) ライ様症候群、乳児突然死症候群 | |
(2) 各臓器の脂肪酸酸化障害に起因する症状・所見 | |
(1) 筋緊張低下、筋力低下、労作時の筋痛、横紋筋融解症 | |
(3) 一般検査の異常所見 | |
(1) 代謝性アシドーシス、(2) 高アンモニア血症、(3) CPK、AST、ALTの高値 | |
5. 主な合併症 | |
まず低血糖・高アンモニア血症発作が、ライ症候群、乳児突然死症候群、最近ではインフルエンザ脳症と誤診されることもある。この様 な発作を繰り返すことによる後遺症としての、脳障害、発達遅滞も危険である。筋肉・心臓・肝臓症状が主体の場合は、心肥大、肝不全や横紋筋融解に伴うミオ グロビン尿症による腎不全も危険な合併症である。 | |
6. 主な治療法 | |
急性期はブドウ糖の補充を中心に、アシドーシスの補正、高アンモニア血症の治療を行い代償不全の回復に努める。以下に慢性期の治療 法を列挙する。1) 食事中の脂肪摂取を減らす。2) 長い空腹を避け、朝食を早く取り、体脂肪が利用されるような状態を招かないようにする。時に夜間コーンスターチの利用や頻回食が必要とされることもある。 3) 中鎖脂肪酸を含む食品の摂取。4) 毒性中間代謝産物の除去:L-カルニチンの投与。ただし長鎖アシルカルニチンは心臓毒なので、特にカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼⅡ異常症など においては過量投与に注意が必要である。5) 感染症など体蛋白異化が亢進する危険のある時は、速やかに病院を受診する。6) 奇数鎖脂肪酸の投与:偶数鎖脂肪酸のみだと糖新生に関与できないが、奇数鎖脂肪酸は最終的にプロピオニル-CoAとなり、TCAサイクルから糖新生系に回 る。 | |
7. 研究班 | |
日本人長鎖脂肪酸代謝異常症の患者数把握と、治療指針作成および |