軟骨異栄養症(平成21年度)

なんこついえいようしょう
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1. 概要

軟骨細胞分化の異常による内軟骨性骨化の障害のため、長管骨の成長障害、頭蓋底の低形成などを生じ、四肢短縮型の低身長となる疾患 である。頭蓋底、顔面骨の低形成のため、前額部突出、鞍鼻、顔面中央部の低形成など特徴的な顔貌を生じる。四肢の短縮は近位節に強い。通常、精神発達は正 常であるが、頭蓋底の低形成や脊柱管の狭小化により様々な程度の神経症状を伴う。成長障害に対しては我が国では成長ホルモン治療が保険適応となっているが その効果は限定的である。

2. 疫学

軟骨無形成症:1万分娩に0.5~1.5人の割合で発生。軟骨低形成症の頻度は不明。

3. 原因の解明

軟骨異栄養症のうち軟骨無形成症や一部の軟骨低形成症は主に線維芽細胞増殖因子受容体3型(FGFR3)の異常により生ずる事がわ かっており、遺伝子変異もG380R変異によるものがほとんどである。軟骨低形成症に関してはFGFR3の異常の無いものも存在することがわかっている が、FGFR3に異常を認めないものの原因については不明である。軟骨無形成症は骨X線で診断は容易だが、軟骨低形成症やそのほかの四肢短縮型の小人症の 診断は困難である。

4. 主な症状

(1) 低身長

軟骨無形成症では男性で成人身長が130cm、女性で122cm程度と著明な低身長をとる。骨低形成症では軟骨無形成症よりも低身長の度合いは軽度である。

(2) 四肢の短縮

近位部(大腿骨や上腕骨)の短縮が認められる。下肢のO脚も認められる。

(3) 顔面正中部の低形成

気道の閉塞などが起こりやすく睡眠時無呼吸症候群の原因となることがある。

(4) 中枢神経、末梢神経の障害

(成人期には脊椎管の狭窄により末梢神経障害を生じる)知的発達は正常。

5. 主な合併症

(1) 内軟骨骨化の異常により大後頭孔の狭窄をきたし、それによる水頭症や、延髄の圧迫、呼吸中枢の障害、閉塞性無呼吸などをきたし、時に突然死を来すことがあ る。そのため、乳児期から幼児期にかけては頭部MRIなどでの大後頭孔の狭窄や水頭症の有無について定期的なフォローアップを必要とする。また睡眠時無呼 吸の有無の評価のためにポリソムノグラフィーも定期的に行う必要がある。

(2) 上気道の閉塞により中耳炎を頻繁に併発することがある。

6. 主な治療法

低身長に対する成長ホルモン療法が小児慢性特定疾患の対象疾患となっており、3歳より公費負担で治療を受けることが可能である。思 春期年齢となり骨端線閉鎖の前後で四肢の短縮に対する骨延長術を行うことで、約10cmの身長の増加を得ることができるとされている。大後頭孔の狭窄を認 めるものに対しては、水頭症や突然死などを回避するために狭窄の脳外科的な解除が必要となる。

7. 研究班

四肢短縮型小人症の新規遺伝子診断基準作成研究班