封入体筋炎(平成21年度)
ふうにゅうたいきんえん
| |
1. 概要 | |
筋への炎症性細胞浸潤を認め、筋線維の細胞質と核内に線維性封入体、縁取空胞がみられることで筋病理学的に診断される。臨床的には慢性の経過で四肢および嚥下機能をおかし、経過は進行性である。副腎皮質ステロイドによる効果はないかあっても一時的である。 | |
2. 疫学 | |
日本での状況は不明。豪州での有病率は人口10万あたり0.93人 | |
3. 原因の解明 | |
一時期は筋肉の遅発性ウィルス感染症と推定されたが、現在はこの考え方は否定されている。封入体筋炎という病名が初めて使われたの は1971年でその後、筋線維内にアミロイドが存在すること、封入体にはアミロイド前駆たんぱくやリン酸化タウが証明できることなど、アルツハイマー病と の相同性が指摘されるようになっている。 | |
4. 主な症状 | |
初発症状は下肢(特に立ち上がり動作や階段昇降困難)、上肢の遠位筋の筋力低下、嚥下困難である。近位筋優位の症例が多いが遠位筋優位の症例もある。左右差がめだつ症例もまれでない。下肢は大腿屈筋群の障害に比して大腿四頭筋の障害がめだつ。30%程度に嚥下障害がみられ る。時に筋萎縮性側索硬化症(ALS)に類似した臨床経過および検査所見を呈し、鑑別診断が困難なことがあるので注意を要する。 | |
5. 主な合併症 | |
他の免疫疾患合併の報告はあるが、悪性腫瘍の合併については皮膚筋炎や多発筋炎のような関連はないと考えられている。 | |
6. 主な治療法 | |
臨床的特徴から本症の可能性を念頭におき、大量のステロイドを長期に渡って使用することを避けるべきである。免疫グロブリン大量療法の報告があるが、高額な治療費に対して健康保険は適応されない。 | |
7. 研究班 | |
封入体筋炎(IBM)の臨床調査および診断基準の作成に関する研究班 |