慢性偽性腸閉塞症は食道から大腸までの全消化管運動機能障害で、物理的な腸管の閉塞がないにもかかわらず腸閉塞様症状をきたす原因 不明の難治性疾患である。本疾患の罹病期間は長期にわたり罹患患者の生活の質（Quality of Life）を極度に低下させているが，我が国における現状は過去の文献をみても少数の症例報告があるのみで詳細は全く不明である。今回の調査は当該疾患の 現状を調べる我が国で初めての研究である。

過去の本邦での調査がないため不明（推定数百名）

疾患の原因は不明であるが、神経疾患や膠原病に続発する病態が知られており、関連が示唆されている。おそらく多くの原因が関連しあい発症する病態と考えられている。わが国における疾患の詳細は全く不明であり、今回の調査でこの点を明らかとする一助としたい。

消化管機能低下に伴う、下痢、便秘、腹痛、悪心、嘔吐などを日常的に起こしている症例が多い。また腸閉塞が悪化した場合入院加療が必要となり、これらの症状に加え、発熱さらには腸管の壊死等に伴う重篤な症状をきたすことがある。

腸閉塞の悪化に伴う腸管壊死等、手術が必要な病態が発生することがある。また腸管からの栄養吸収障害が発生し、低栄養、また、中心 静脈栄養が必要となる症例もある。なお最も問題となる合併症は、永年にわたり疾患，症状が持続するため生活の質(Quality of Life)が極度に低下することである。

治療法は定まっていない。試みられている方法としては、腸管内細菌フローラのコントロール（抗生物質，整腸剤等）、便の形状、排便 のコントロール（ポリカルボフィルカルシウムや他の下剤）、消化管運動に影響する薬剤（モサプライドやエリスロマイシン）、さらに海外ではソマトスタチン アナログや小腸移植などが試みられている。

慢性偽性腸閉塞症の我が国における疫学・診断・治療の実態調査研究班