慢性動脈周囲炎(Chronic Periaortitis: CP)(平成21年度)

まんせいどうみゃくしゅういえん(Chronic Periaortitis: CP)
研究班名簿 一覧へ戻る

1. 概要

大動脈周囲に慢性の炎症性線維増生を生じる疾患。線維化の程度によっては、周囲の組織を巻き込み、尿路狭窄や疼痛の原因となりう る。動脈硬化などの背景を元に生じる場合がある。疾患概念としては特発性後腹膜線維症や炎症性動脈瘤を含んでいるが、これらの疾患が共通のメカニズムを背 景に発症してくるかどうかは明らかではない。また薬剤や悪性腫瘍に伴って生じてくるケースも指摘されている。大動脈術後の外膜組織の炎症性変化は予後にも 関連する可能性がある。

2. 疫学

100,000人当たり1.35人

3. 原因の解明

疾患の頻度が低いことに加え、内科、心臓血管外科、泌尿器科など、異なる診療科が対応する可能性のある疾患であることから、全体像 が捉えにくい面がある。また、水腎症などの脈管の狭窄・閉塞所見がなくても、CT上、大動脈周囲の炎症性肥厚を認める場合もある。今回の検討では、軽症症 例、大動脈手術症例なども対象とした検討をおこない、実態把握をめざすとともに、可能であればバイオマーカーなどについても検索したいと考えている。

4. 主な症状

1) 炎症性大動脈瘤

腰痛,腹痛など。腹部に拍動性腫瘤を認めることは、通常の大動脈瘤と同様である。

2) 特発性後腹膜線維症

非定型的な腹痛、背部痛などを認めるが、ときに激痛となることがある。線維組織が尿路を巻き込んで水腎症を呈し、腰背部痛、浮腫、乏尿を症状とするケースがある。

3) 薬剤や悪性腫瘍に伴う二次性CP

5. 主な合併症

大動脈周囲の線維組織肥厚により、周囲組織を巻き込んで、水腎症から腎不全などの臓器障害を併発しうる。また、炎症が、心外膜や胸膜、腹膜などに波及するケースもあり、心不全や呼吸困難、腹満の原因となる場合もある。

6. 主な治療法

薬物治療はIAA、IRFともステロイドや免疫抑制剤などが選択されるが、本邦において定まったプロトコールはない。尿路閉塞を認める場合には、ステロイド治療や尿管ステント留置、あるいは一時的な経皮的腎瘻などの処置により透析導入を回避できる可能性がある。

7. 研究班

慢性動脈周囲炎の予測と実態把握にむけた研究班