牟婁病(紀伊ALS/PDC) (平成21年度)

むろびょう(きいALS/PDC) (きんいしゅくせいそくさくこうかしょう/ぱーきんそんにんちしょうふくごう)
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1. 概要

紀伊半島南部とグアム島は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の世界的な多発地域として知られている。これらの地域には、パーキンソニ ズムと認知症を主症状とする特異な神経変性疾患であるパーキンソン認知症複合(parkinsonism-dementia complex、PDC)が多発しており、ALSと密接な関連がある。

2. 疫学

数十人~100人程度

3. 原因の解明

これまでに、遺伝説、環境因説(微量ミネラル/重金属説、ソテツに含まれる神経毒)、ウイルス説などが提唱されたが、確立したもの はない。ALS/PDCの中枢神経系には、異常にリン酸化されたタウ蛋白が多量に蓄積しており、神経細胞死との関連が推察されている。また、近年、前頭側 頭型脳葉変性症と筋萎縮性側索硬化症で同定されたTDP-43の蓄積も認められる。

4. 主な症状

紀伊半島のALSの臨床像は、基本的にその他の地域の通常のALSと大差がない。すなわち、球麻痺、四肢筋萎縮、錐体路徴候が主症 状で、病期の進行とともに呼吸筋麻痺が出現する。発症年齢は、平均60.0歳で、球麻痺で発症するものが多い。約30%にALSもしくは、PDCの家族歴 がある。一方、PDCの主症状は、物忘れや意欲低下を主徴とする認知症とパーキンソン症状で、多くの症例で運動ニューロン徴候を合併する。PDC症例の 70%以上にALSもしくはPDCの家族歴があり、平均発症年齢は66.5歳である。

5. 主な合併症

転倒などによる外傷嚥下障害による誤嚥性肺炎や寝たきり後の尿路感染症、褥瘡など

6. 主な治療法

有効な治療法はない。L-dopaは、一部の症例のパーキンソン症状に対して有効なことがある。

7. 研究班

牟婁病の実態の把握と治療指針作成に関する調査研究班