ウエルナー(Werner)症候群(平成21年度)
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1. 概要 | |
1904年にドイツの医師オットー・ウエルナーにより初めて報告された常染色体劣性の遺伝性疾患。思春期以降に、白髪、白内障などさまざまな老化兆候が出現することから、代表的な「早老症候群」の一つに数えられている。 | |
2. 疫学 | |
約2000名。 | |
3. 原因の解明 | |
第8染色体短腕上に存在するRecQ型のDNAヘリカーゼ(WRNヘリカーゼ)のホモ接合体変異が原因と考えられている。しかし、何故この遺伝子変異が、本疾患に特徴的な早老症状、糖尿病、悪性腫瘍などをもたらすかは未解明である。 | |
4. 主な症状 | |
20歳台より、白髪・脱毛などの毛髪変化、白内障(両側性の場合が多い)、高調性の嗄声、腱など軟部組織の石灰化、皮膚の萎縮や角 化・潰瘍、四肢の筋・軟部組織の萎縮、高インスリン血症を伴なう耐糖能障害、性腺機能低下症などが見られるようになる。また低身長である場合が多い。死亡 の二大原因は動脈硬化性疾患と悪性腫瘍であり、平均死亡年齢が40歳代半ばと言われてきた。しかし、最近の国内外の報告では寿命が5~10年延長し、60 歳を超えて普通に生活する患者も少なくない。 | |
5. 主な合併症 | |
粥状動脈硬化を生じやすい背景として、インスリン抵抗性を伴なう耐糖能障害や高トリグリセライド血症、内臓脂肪の蓄積など、メタボ リックシンドロームに類似の病態がみられる。また、高LDLコレステロール(LDLC)血症も伴いやすい。悪性腫瘍には、悪性黒色腫や骨肉腫、造血系腫瘍 など間葉系腫瘍が多い。上皮性腫瘍としては、甲状腺癌や近年では肺癌の合併が多い。腱の石灰化は、しばしば疼痛を伴なう。足部の皮膚潰瘍は難治性であり、 患者のADLを低下させ、下肢の切断を必要とすることが少なくない。 | |
6. 主な治療法 | |
根本的治療法は未開発である。白内障は通常手術を必要とする。糖尿病に対しては一般にチアゾリジン誘導体が著効を示す。高LDLC 血症にはスタチンが有効である。四肢の難治性皮膚潰瘍に、保存的治療が無効な場合には、他部位からの皮膚移植を検討する。一方、体幹部の皮膚創傷治癒能は 通常損なわれていないため、甲状腺癌、肺癌等に対する手術適応は、本疾患以外の患者と同等に考えてよい。 | |
7. 研究班 | |
ウエルナー症候群の病態把握と治療指針作成を目的とした全国研究班 |