シトリン欠損症(平成21年度)

しとりんけっそんしょう
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1. 概要

シトリンはミトコンドリア内膜に局在する肝型アスパラギン酸・グルタミン酸膜輸送体で、その欠損は細胞質へのアスパラギン酸供給障 害やミトコンドリアへのNADHの供給障害、糖新生障害を引き起こす。その欠損症は新生児・乳児期では胆汁うつ滞症、高シトルリン血症、幼児・青年期では 食癖異常など、成人期ではいわゆる成人発症II型シトルリン血症を発症する。

2. 疫学

約6,000人

3. 原因の解明

シトリン欠損症では新生児期の高シトルリン血症、胆汁うつ滞症は生体の代償作用により、一時的に軽快する。しかしながら、乳児期肝 不全による生体肝移植を必要とした例が知られており、その重症発症原因は不明である。成人期にはその代償機構の破綻により、約20%の患者で成人発症II 型シトルリン血症を発症する。この成人発症Ⅱ型シトルリン血症を顕在化せしめる原因についてはいまだ明確ではなく、遺伝的要因とともに環境的要因の関与が 重要であるとされている。

4. 主な症状

1) 新生児期: 子宮内発育不全、高シトルリン血症、ガラクトース血症、胆汁うつ滞症、黄疸、発育不全、低血糖症、ビタミンK欠乏性凝固異常。

2) 幼児期から青年期: 食癖異常(高脂肪高蛋白低糖質、頻回摂取)、成長障害(体重増加不良)、易疲労感、低血糖症、肝機能異常。

3) 成人期: 成人発症Ⅱ型シトルリン血症ー高アンモニア血症、高シトルリン血症、高アルギニン血症、肝不全、けいれん、精神症状(見当識障害、異常行動など)。

5. 主な合併症

1) 新生児期: 凝固障害による脳内出血、ガラクトース血症による白内障。

2) 学童から成人期: 胃腸の不快感、高脂血症、脂肪肝、肝癌、膵炎。

6. 主な治療法

1) 新生児期: 胆汁うつ滞に対する治療(利胆剤、脂溶性ビタミン剤、MCTミルク)、ガラクトース除去ミルク。

2) 食事療法(高脂肪・高蛋白・低炭水化物食)、頻回食。

3) 成人期(成人発症Ⅱ型シトリン欠損症): 食事療法、ピルビン酸ナトリウム、肝移植。

7. 研究班

シトリン欠損症の自然歴と生活歴にもとづく実態解明と治療指針の作成班