レット(Rett)症候群(平成21年度)

れっと(Rett)しょうこうぐん
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1. 概要

レット症候群は1966年ウィーンの小児神経科医Andreas Rettにより初めて報告された。本症は神経系を主体とした特異な発達障害である。初発症状は乳児期早期に外界への反応の欠如、筋緊張低下にて発症する が、それらの症状が大変軽微であるため異常に気付かないことが多い。乳児期後半以後手の常同運動を主体とする特徴的な症状が年齢依存性に出現する。治療法 は現時点では対症療法である。原因遺伝子はMethyl-CpG-bindingprotein2遺伝子(MECP2)である。MECP2の基礎的研究が 進められているが、レット症候群の病態解明までには至っていない。

2. 疫学

約5,000人(推定)

3. 原因の解明

1999年Xq28に連鎖するMethyl-CpG-binding protein2遺伝子(MECP2)が本症の原因遺伝子であることが解明された。その後の検索で臨床的に典型例において、レット症候群の80-90%に MECP2の変異がみられる。数%にCDKL5、FOXG1の変異が報告されているが、非典型例に多い。

4. 主な症状

本症の発症は乳児期早期にあり、睡眠、筋緊張の異常、姿勢運動の異常、ジストニア、側彎、情動異常、知的障害、てんかんなどの症状が年齢依存性に出現することを特徴とする。
“おとなしく、よく眠る、手のかからない子”と表現される如く日中の睡眠時間が長く、外界からの刺激に対する反応に欠けることが特徴である。これらの症状 は通常見逃され、”当初乳児期早期は正常”とされることが多い。乳児期には抗重力筋の緊張低下があり、そのため運動発達は寝返りから遅れることが多い。特 に四つ這い移動の遅れ、または出来ないことが多い。四つ這いの姿勢は屈曲肢位で交互性に欠ける。独歩も遅れることが多く、生涯不能の例もある。乳児期後半 にそれまで獲得した手の機能の消失と前後して、特異的な手の常同運動が出現する。乳児期には姿勢ジストニアが出現してくる。小児期以後から出現する側彎は ジストニアによると考えられている。発症早期の情動異常は自閉症との類似性があり、乳児期後半から知的障害が前面に出、多くの場合、最重度の知的障害を呈 する。また。頭囲の拡大は乳児期後半より停滞し、幼児期には小頭を呈することが多い。
てんかん発作、特異な呼吸を呈してくることもある。本例は特異な発達障害であり、中高年・老人の症例もみられる。
小児期から思春期にかけて、突然死の発生も知られている。

5. 主な合併症

重症心身障害児にみられる合併症(感染症、誤涎性肺炎など)には日常生活上注意を要する。食物摂取が上手に出来ないため、るい痩が顕著となり胃ろう造設を余儀なくさせられることもある。吐気症は大変稀であるが消化管の破裂をきたすこともある。
稀であるが小児期の胆石の合併の報告もある。特に自分で症状、痛みなどを訴えることが出来ず周囲からの注意が不可欠である。
骨の発達も悪く骨折にも注意を要する。

6. 主な治療法

現在のところ根本的治療法はない。従って治療は対象療法である。例えばてんかんがある場合は抗てんかん薬の投与などである。本症の 重要な病態であるロコモーション障害やジストニアに対する理学療法、また、手の常同運動に対して病態を考えた上での適切な上肢機能の指導なども必要であ る。情緒面の問題、知的障害に対す種々の工夫、療育等も重要である。
常同運動、異常呼吸に対して薬剤療法も試みられてきているが、有効なものは無い。側彎が進行した場合、側彎矯正の手術が行われることがある。

7. 研究班

レット症候群の診断と予防・治療法確立のための臨床および生物科学の集学的研究班