14番染色体父性片親性ダイソミー関連疾患(平成21年度)

14ばんせんしょくたいいふせいかたおやせいだいそみーかんれんしっかん
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1. 概要

14番染色体父性片親性ダイソミー関連疾患は、14番染色体長腕の32.2領域(14q32.2)に存在するインプリンティング遺 伝子の発現異常により生じる。羊水過多、小胸郭による呼吸障害、腹壁異常、特徴的顔貌を示す。長期生存例では小胸郭は改善し、幼児期には呼吸障害を認めな くなることが多い。精神遅滞を伴う。治療法は未確立で、対症療法となる。

2. 疫学

文献報告は約30例。我々はupd(14)pat12例、欠失例6例、エピ変異4例を同定している。

3. 原因の解明

14番染色体片親性ダイソミー: 患者の14番染色体がともに父親由来であるために正常では父親由来アリルからのみ発現する父性発現遺伝子が過剰発現となり、母性発現遺伝子の発現は消失することにより疾患が生じる。
微小欠失: 母親由来アレル上のIG-DMRとMEG3-DMRを含む微小欠失をもち、upd(14)patの表現型を示す症例。インプリンティングセンターであるIG-DMRとMEG3-DMRの消失により発症する。
エピ変異: upd(14)patの表現型を示し、IG-DMR,MEG3-DMRの過剰メチル化を示すが、ダイソミーも微小欠失も認めない症例。そのメカニズムは不明である。

4. 主な症状

胎児期は、羊水過多を認める。羊水過多は、妊娠中期から始まり複数回の羊水穿刺を必要とする場合が多い。胎盤の過形成も認められ る。出生後はベル型と形容される小胸郭による呼吸障害が認められ、ほとんどの症例で数ヶ月にわたる人工呼吸管理を必要とするが経過とともに胸郭異常は改善 する。また、臍帯ヘルニアや腹直筋の離開といった腹壁の異常を認める。前額部突出、眼瞼裂の縮小、平坦な鼻梁、小顎といった特徴的な顔貌を示す。多くの症 例で哺乳不良が認められる。少数の長期生存例では精神発育遅滞を認めている。

5. 主な合併症

動脈管開存、心房中隔欠損などの心疾患を合併することがある。鼠径ヘルニアの合併を伴うことがある。

6. 主な治療法

対症療法が中心となる。新生児期は呼吸障害に対する人工呼吸管理を必要とする。数日で不要となる症例もあるが、多くの症例では数ヶ 月間の人工呼吸管理を必要とし、気管切開ののち在宅レスピレーター管理となっているものもいる。巨大な臍帯ヘルニアに対しては外科的治療が選択される。哺 乳不良に対しては新生児期、乳児期において経管栄養を必要とするが幼児期までには経口摂取が可能となる症例が多い。

7. 研究班

14番染色体父性片親性ダイソミー関連疾患の実態把握と診断・治療指針作成班