免疫系疾患分野|高IgD症候群(平成22年度)

こうIgDしょうこうぐん
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1. 概要

コレステロール生合成の経路に関わるメバロン酸キナーゼの機能低下に よって生じる周期性発熱症候群。完全欠損ではより重篤なメバロン酸尿症の病型を取る。主として欧州で発見され血清IgD高値である症例が多く、高IgD症 候群という疾患名が採用されている。本邦では血清IgD正常値のため正確な診断を受けずに不明熱として治療されていた症例の報告があり、欧米で報告されて きた臨床像が本邦でも該当するか明らかでない。

2. 疫学

欧州を中心に数百人程度が診断されている。東アジア圏にはほとんど存在しないと考えられてきが、2008年より本邦においても欧州と異なる変異型の新規患者が診断されるようになり、本邦を含む東アジア圏でも相当数(10-20名程度)の患者数が潜在していると推測される。

3. 原因

より重症型の病型を取るメバロン酸尿症とともにメバロン酸キナーゼを コードする遺伝子mvkの変異による連続的な病因であることが2004年に判明し、より正確な診断が可能となった。しかしながら、日本において、酵素活性 測定などの診断基盤が確立されていない。また、メバロン酸キナーゼの欠乏がなぜ周期熱症候群の病型を取るのかに関しては、現時点で明確な回答はなされてい ない。

4. 症状

乳児期より始まる4-6日程度持続する周期性の発熱発作が大きな特徴 で、発作の際には頭痛・嘔吐・下痢・腹痛・リンパ節腫脹を伴う。その他に、肝脾腫、発疹、関節痛、関節炎、アフタ性口内炎を伴う。海外報告では血清IgD 高値を取ることが多いが(80%以上の症例においいて)、現在の本邦で判明している症例では、そのほとんどがIgD値は正常である。

5. 合併症

腹膜炎に続発する腹腔内癒着が10%程度、関節拘縮、アミロイドーシス も数%に見られる。重症例では精神発達遅滞や痙攣を合併する症例もある。また、乳児期からの発熱発作による学習の遅れが約半数の患者で見られ、20%程度 が高等学校の卒業が出来ていない。また、26.4%の患者が成人後も職に就くことができず、社会的機能に障害を来たしているとの報告が欧州でなされてい る。

6. 治療法

ステロイド剤を中心に治療されている症例が多いが、その適応に関しては 再評価が必要である。メバロン酸を合成するHMG-CoA還元酵素阻害薬であるstatinが有効とされる症例もある。近年TNFαやIL-1βに対する 生物学的製剤の有効例も報告されているが、明確に有効であるとは言い難い。重症例に対して、造血幹細胞移植の報告もある。確立した治療法はない。

7. 研究班

日本人特有の病態を呈する高IgD症候群に向けた新規診療基盤の確立研究班