神経系疾患分野|重症・難治性急性脳症(平成22年度)
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1. 概要 | |
急性脳症は小児期に多く、各種のウイルス感染症を契機として急激に発症し、意識障害を呈する。罹病率は年間数百例と稀少であるが、症例の多くが死亡したり後遺症を持つため、医学的・社会的に大きな問題を生じている。 急性脳症の臨床像は多彩である。重症の病型はしばしば難治で、予後も不良である。重症・難治性急性脳症の代表的病型として、急性壊死性脳症(ANE)、遅発性拡散低下をともなう急性脳症(AESD)の2つがある。 | |
2. 疫学 | |
インフルエンザ脳症の罹病率は年間50~500例で、急性脳症全体の頻 度はその2~数倍であることから数百~千例程度、このうち重症・難治性の急性脳症は数百例までと推測される。ANEの罹病率は年間数十例、AESDは百例 程度と思われるが、これまで全国的な調査は行われていないので、早急に調査の必要がある。稀な疾患ではあるが、世界的に見ると東アジア(日本、台湾、韓 国)に多いことが知られている。 年齢的には1歳をピークとして幼児期に多い分布を示すが、例外的には成人期の発症もある。 死亡率はANEで30%以上、AESDで数%とされるが、再調査する必要がある。 | |
3. 原因 | |
感染症を契機としてサイトカインストーム、代謝異常(ミトコンドリア等)、興奮毒性などの病態が進行し、脳および諸臓器でアポトーシスと血管機能低下(透過性亢進、血流障害)をきたす。ANEの主病態はサイトカインストーム、AESDの主病態は興奮毒性と推定されている。 | |
4. 症状 | |
ANEなどサイトカインストームによる脳症では、びまん性・血管性の脳浮腫が早発性(発症後1~2日以内)に生じ、全身状態も不良で死亡率が高い。 AESDでは大脳皮質の浮腫が遅発性(発症後3~7日)に生じ、意識障害・けいれん発作などの神経症状が亜急性・二相性の経過を示す。 | |
5. 合併症 | |
ANEなどサイトカインストームによる脳症では、血液異常(DIC)、心・肝・腎障害など多臓器不全を合併しやすい。 | |
6. 治療法 | |
現在、支持療法に加え、抗サイトカイン療法(副腎皮質ステロイド・パルス療法など)や脳保護療法(脳低体温療法など)が行われている。しかしANEやAESDに対する両者の効果は不十分である。さらに病型の如何にかかわらず画一的な治療が行われていることも問題視される。 | |
7. 研究班 | |
重症・難治性急性脳症の病因解明と診療確立に向けた研究班 |