神経系疾患分野、代謝疾患分野|瀬川病(平成22年度)
| |
1. 概要 | |
14q22.1-22.2に存在するGTPシクロヒドロラーゼ遺伝子異 常に起因する常染色体優性遺伝性疾患で、黒質線条体ドパミン神経系終末部のドパミン欠乏による固縮型筋緊張異常によるジストニア姿勢およびジストニア運動 を主症状とする。典型例は10歳以下に発症、女性優位の性差を有する(男:女=1:4)。ジストニア、とくに小児期の姿勢ジストニアは著明な日内変動を呈 する。 | |
2. 疫学 | |
2009年度に施行した本研究班による全国調査では0.5-1.0/1,000,000の発症頻度であった。遺伝形式は不完全な浸透率を呈する常染色体優性遺伝である。 | |
3. 原因 | |
14q22.1-22.2に存在するGTPシクロヒドロラーゼ遺伝子異常に起因する常染色体優性遺伝性疾患で、黒質線条体ドパミン神経系終末部のドパミン欠乏による。 | |
4. 症状 | |
姿勢ジストニア型と動作ジストニア型の2型に分けられ、姿勢ジストニア 型は、多くは6歳頃、一側下肢内反尖足で発症、15歳頃までに全肢にひろがり、20歳頃まで筋強剛が進行するが、その後、進行は緩やかになり、30歳以後 は定常状態となる。10歳頃から姿勢振戦が認められる。動作ジストニア型は、これに加え、8歳以後、上肢のジストニア運動、頸部後屈、 oculogyric crisisが発現、思春期以後、主に成人年齢で斜頸、書痙を併発する。この病型には運動誘発性ジストニア、むずむず足症候群を呈する症例もある。さら に、成人年齢で斜頸、書痙、または、パーキンソン病様症状で発症する症例がある。しかし、これは真性のパーキンソン病とは異なり、大脳基底核GABA系出 力系の活性低下に起因する高活性型病態を有する。さらに、これらの症例にはすでに発達過程の終わった線条体へ投射するニューロン終末部ドパミン低下に起因 する全身性ジストニア姿勢はみられない。この年齢依存性の発現の機序と神経系の発達における意義も研究の1つとなる。 | |
5. 合併症 | |
終末部のドーパミン欠乏症は、精神発達障害、精神運動障害、痙攣など中 枢神経症状を発現せず、ロコモーションも正常に保たれる。大脳の器質的病変も発現しない。しかし、動作ジストニア型では家系により鬱病を合併することがあ る。また、早期、主に乳児期発症例ではセロトニン欠乏を発現、自閉傾向、うつ傾向、強迫神経症、頭痛を併発する例がある。また、筋緊張低下、ロコモーショ ンの障害を来たし、さらに、脚橋被蓋核活性低下を併発、ドーパミン欠乏も併発、思春期以後、パーキンソン病と同様の病状を呈することが知られている。プテ リジン代謝障害によるセロトニン活性低下の疾病発現の機序、年齢依存性、また、ロコモーションとドパミン神経発達の関係も研究の中に含める。 | |
6. 治療法 | |
L-DOPAが著効を呈し、その効果は副作用なく永続する。しかし、動 作ジストニア型では主病変が視床下核のD1受容体の異常にあるため、D2間接路に作用することにより、L-DOPAで十分な効果が得られない例がある。理 論的にはD1作動薬が適剤となる。また、セロトニン欠乏を伴う症例には、早期からの5ハイドロキシ・トリプトファン、またはテトラヒドロビオプテリンの投 与が望まれる。これらの治療法の開発も試みる予定である。 | |
7. 研究班 | |
小児神経伝達物質病の診断基準の作成と患者数の実態調査に関する研究班 |