神経系疾患|脆弱X症候群(平成22年度)
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1. 概要 | |
知的障害を示す代表的な遺伝性の疾患である。X染色体長腕末端部の3塩 基(CGG繰り返し配列)が、代を経るごとに延長するために発症するトリプレットリピート病の一つである。リピート延長の程度が軽い場合(前変異)では、 パーキンソン病様の症状を示す脆弱X随伴振戦/失調症候群 (FXTAS)や早期卵巣不全(POF)を呈することがある。 | |
2. 疫学 | |
日本人の男性で1万人に1人程度の頻度と考えられている。日本では、約5,000人の患者がいると推定される。しかし、実際に本症と診断されている患者は少ない。遺伝子診断を普及させ、患者を明らかにする必要がある。 | |
3. 原因 | |
染色体Xq27.3に存在するFMR1遺伝子の異常により発症する。患 者では、遺伝子内の3塩基(CGG)繰り返し配列が延長している。正常では50以下の繰り返し配列数が、FXTAS,POFでは50以上、脆弱X症候群で は200以上延長するために発症する。脆弱X症候群では脳のシナプスの異常が明らかになっているが、知的障害の詳細なメカニズムは未だ不明である。 | |
4. 症状 | |
脆弱X症候群は、精神遅滞(一般的に重度)、細長い顔、大耳介、巨大睾丸(成人男性)、自閉的症状、その他(学習障害、多動、注意欠陥、関節の過伸展、扁平足など)を示すが、精神遅滞以外の症状が目立たない場合も多い。女性の患者の場合は、比較的症状が軽い。 | |
5. 合併症 | |
脆弱X症候群では僧帽弁逸脱症を伴うことがある。眼科的には斜視を伴うこともある。 | |
6. 治療法 | |
現在、本質的な治療法は研究段階であり、特別な治療法はまだない。行動異常には症状に応じた薬物療法を行う。僧帽弁逸脱症、斜視などの合併症には通常の治療を行う。治療法の開発が始まっている。 | |
7. 研究班 | |
日本人脆弱X症候群および関連疾患の診断・治療推進の研究班 |