血液・凝固系疾患|先天性好中球減少症(平成22年度)

せんてんせいこうちゅうきゅうげんしょうしょう
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1. 概要

先天性好中球減少症は、末梢血好中球絶対数が500/μl未満(多くは 200/μl未満)の慢性好中球減少,骨髄像での前骨髄球と骨髄球の段階での成熟障害,重症反復性細菌感染症を臨床的特徴とする。G-CSF投与で好中球 減少と臨床症状は改善するが,一部の症例では骨髄異形成症候群(MDS)および急性骨髄性白血病(AML)に移行することが知られている。

2. 疫学

本邦では40家系程度が報告され,解析されている。

3. 原因

本疾患は種々の遺伝子変異によって好中球減少が認められる疾患群であ る。現在までに好中球エラスターゼ遺伝子(ELA2),HAX1,GFI1,G6PT1, G6PC3変異などが同定されており,本邦ではELA2変異が約70%,HAX1が約20%の頻度である。責任遺伝子と病因・病態についての詳細は不明で ある。

4. 症状

乳児期からの臍帯炎,肺炎,皮膚感染症,中耳炎などの重症細菌感染症を反復する。HAX1欠損症では成長発達障害,神経学的異常(てんかん)を示す。糖代謝異常を伴うSCNでは低血糖症を認める。

5. 合併症

G-CSF投与例で投与後10年くらいで約13%の症例でMDS/AMLへの移行がみられる。

6. 治療法

90%以上の症例でG-CSF投与により好中球増加が認められるが,高 用量(5~120 μg/Kg)を要する。G-CSFの長期使用により約13%の症例でMDS/AMLを合併する。MDS/AML合併例は造血幹細胞移植が必要である。近年 はMDS/AML移行前に骨髄非破壊的前処置による造血幹細胞移植が根治療法として施行されている。

7. 研究班

先天性好中球減少症の効果的診断方法の確立と治療ガイドライン作成に関する研究班