血液・凝固系分野|先天性顆粒放出異常(平成22年度)
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1. 概要 | |
細胞傷害性Tリンパ球(CTL)や NK 細胞の顆粒放出の異常によりさまざまな臨床所見を呈する乳幼児の疾患で、家族性血球貪食性リンパ組織球症、Chediak-Higashi 症候群、Griscelli 症候群、X-linked lymphoproliferative disease などが含まれる。劇的な経過をたどり造血幹細胞移植なしでは予後は不良であるが、日本における実態とその診断法は確立されていない。したがって本疾患の病 態解明と診断法確立は、小児医療の発展につながる。 | |
2. 疫学 | |
年間20例程度で、内訳は | |
3. 原因 | |
原因はリンパ球の分泌顆粒の放出に関わる遺伝子の異常による標的細胞の細胞死誘導障害。その結果、高サイトカイン血症とそれによるさまざまな臨床症状を呈する。 | |
4. 症状 | |
一部の症例では白皮症などの先天異常を合併するほか、その多くはウイル ス感染の合併による発熱などの感染症状、肝脾腫、肝機能障害、高サイトカイン血症、血球貪食、など多彩な症状を呈する。しかしこれらの症状は非特異的症状 でありしばしば再燃を繰り返す。また重症のウイルス感染症、細菌・真菌感染症、免疫不全疾患、造血機能障害などと区別が難しい上、致死的な経過をたどるこ とが多い。 | |
5. 合併症 | |
ほとんどの症例で肝機能障害を合併するほか、重症例では肝不全、凝固異 常、電解質異常などを合併する。また異常リンパ球やマクロファージの増殖、活性化により、肺浸潤(呼吸障害)、中枢神経浸潤(けいれん、意識障害)、消化 器浸潤(難治性下痢)などをきたし、最終的には多臓器不全となる。ほとんどの症例で造血幹細胞移植が必要であるため、移植による合併症として GVHD や肺障害の他、成長障害や内分泌障害などの晩期合併症がおこることが多い。またChediak-Higashi 症候群や X-linked lymphoproliferative disease は悪性腫瘍を合併しやすい。 | |
6. 治療法 | |
治療法は確立されたものはないが、重症例ではまずγグロブリン療法、血 漿交換を行い、さらに抗サイトカイン療法としてステロイドや免疫抑制剤の使用を行い症状の沈静化を図る。一方、軽症・中等症ではステロイドや免疫抑制剤の みで寛解することが多い。しかしほとんどの症例では何らかの遺伝子異常が関与しており、最終的には造血幹細胞移植が必要となる。造血幹細胞移植は骨髄、臍 帯血ともに有効であり、近年は骨髄非破壊的前処置が定着しつつある。 | |
7. 研究班 | |
先天性顆粒放出異常症の病態解明と診断法の確立研究班 |