循環器系疾患分野|早期再分極症候群(平成22年度)
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1. 概要 | |
12誘導心電図の下壁誘導(Ⅱ,Ⅲ, aVF)と側壁誘導(Ⅰ, aVL, V4-V6)の中の、2誘導以上で1mm以上のJ波(ノッチやスラーを伴う)増高を有する病態。2008年にHaissaguerreらが初めて疾患の概 要を定義し、NEJM(ニューイングランド医学誌)に報告した。ただし、V4-V6誘導での早期再分極は良性の心電図変化として従前から知られていた。本 疾患では心室細動による突然死が生じるが、ブルガダ症候群と同様に、基礎心疾患を伴わない特発性心室細動の1種と考えられている。 | |
2. 疫学 | |
欧米の報告では、男性に多く、1mm以上のJ波増高が全人口の3-6% に、2mmを越えるJ波増高が0.6%に認められている。このうち下壁誘導(Ⅱ,Ⅲ,aVF)の早期再分極が心臓死、不整脈死に関連するとされており、後 ろ向き研究ではJ波>2mmの症例の年間心臓死率は1.5-2%、不整脈死率は0.8%前後と報告されている。また過去に心室細動を起こし、植込み 型除細動器(ICD)が埋込まれている症例のうち、早期再分極を有する例の予後は、有さない例に比して有意に不良とされている。 | |
3. 原因 | |
現時点では不明で、原因遺伝子も同定されていない。ブルガダ症候群と病 態の似ている症例が3割近くあるとされており、心室再分極の異常が原因として疑われている。ただし、Haissaguerreらの定義では、ブルガダ症候 群を完全に除外できていないという問題点があり、今後疾患概念の整理が必要と考えられる。 | |
4. 症状 | |
心室細動、多形性心室頻拍による突然死が主な症状である。心室細動直前 にはJ波が増高し、20%が睡眠中に発生する、27%が心室細動を繰り返す、34%において電気生理学検査で心室細動が誘発される、と報告されているが、 前述のように、本症候群へのブルガダ症候群の関与が疑われるため、症状についても再検討が必要である。 | |
5. 合併症 | |
ブルガダ症候群、QT短縮症候群との合併が報告されている。 | |
6. 治療法 | |
心室細動を繰り返す症例ではICD植込みが必要。一部の症例において、ブルガダ症候群と同様に、イソプロテレノールが心室細動の頻拍を抑制でき、キニジンが予防に有効と報告されている。 | |
7. 研究班 | |
早期再分極(early repolarization)症候群の病態と遺伝子基盤、長期予後に関する研究班 |