循環器系疾患|乳児期QT延長症候群(平成22年度)
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1. 概要 | |
QT延長症候群のうち、乳児期(0歳時)に発症するものをいう。QT延 長症候群とは、突然、脈が乱れて立ち眩みや意識を失う発作(失神発作)が起こる病気であり、失神発作が止まらない場合は死亡することがある。発作がない時 には自覚症状は全くなく、検査をしても心電図上のQT時間{大きな高い波 (QRS波) の始まりからQRS波に続く中位の高さの波 (T波) の終了までの時間}が長くなる、あるいはT波の形がちがってくること以外は異常が見つからないことが多い。 | |
2. 疫学 | |
QT延長症候群は先天性と後天性に分かれる。先天性は遺伝的素因を持っ たものに出現し、後天性は特定の薬物などの服用や代謝性疾患によって出現するものをいう。後天性のものでも、遺伝的素因のある時におきることもある。乳児 期に発症するものはほとんどが遺伝性と考えられ、それ以降に発症する場合より重症であることが知られている。 | |
3. 原因 | |
心筋細胞のイオン電流、あるいはイオン電流に影響を及ぼす他の蛋白の遺 伝子変異によって起きる。現在12種の原因遺伝子が判明している。変異遺伝子によるチャネルの機能亢進あるいは低下は、心筋細胞の再分極異常(QT時間の 延長やT波の変化)や倒錯型心室頻拍を引き起こし、失神や心臓突然死を伴う。2種以上の変異がある時は重症化しやすい。乳児期は重症であることがわかって いるが、1種の変異の時でも重症であることが知られており、重症化の原因は不明である。 | |
4. 症状 | |
失神、痙攣、突然死ニアミス(救命された突然死)、突然死。 | |
5. 合併症 | |
QT延長症候群に聴覚障害、四肢マヒを伴うこともある。突然死ニアミスに伴う心身障害発生も大きな問題になる。 | |
6. 治療法 | |
薬物治療(β遮断剤、メキシレチン、マグネシウム製剤)が主である。徐脈が症状を誘発している場合は心臓ペースメーカー装着が有効な時がある。薬物療法に反応しない時は電気的除細動器も考慮する。 | |
7. 研究班 | |
乳児期QT延長症候群の診断基準と治療アルゴリズム作成による突然死予防に関する研究班 |