筋疾患分野|ウルリッヒ病(Ullrich disease)(平成22年度)
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1. 概要 | |
生下時または乳児早期から、顔面筋を含む全般性の筋力低下と筋萎縮を来 す。遠位関節の過伸展と近位関節の拘縮を伴うことが特徴である。大半が孤発例であるが、一部に常染色体劣性遺伝形式を取る例がある。ベスレムミオパチーと 同様にCollagenⅥ遺伝子変異を原因としており、ベスレムミオパチーの重症型である。先天性筋ジストロフィーに分類されることもあるが、組織学的に は筋線維壊死・再生変化が乏しく、いわゆる筋ジストロフィーとは異なる病態があるものと考えられる。ベスレムミオパチーとウルリッヒ病の中関型とも言える 筋硬化性ミオパチーの存在を主張する研究者もおり、これらの疾患は、恐らく一連のスペクトラムを形成するのではないかと考えられる。 | |
2. 疫学 | |
これまでに疫学調査が行われたことはないが、先天性筋ジストロフィーの中では一定の頻度を占めることが報告されてきており、希少疾病ではあるものの一定数の患者が存在するものと考えられる。 | |
3. 原因 | |
CollagenⅥをコードするCOL6A1, COL6A2, COL6A3のいずれかの遺伝子の変異により発症する。筋組織の免疫組織学的検討では、collagenⅥの完全欠損を示す場合と筋鞘膜特異的欠損を示す 場合がある。前者は、COL6遺伝子の劣性変異により、後者は優性変異により発症する。 | |
4. 症状 | |
生下時または乳児早期から、顔面筋を含む全般性の筋力低下と筋萎縮を来 す。手関節・足関節などの遠位関節の過伸展がみられることと、肘関節・肩関節・膝関節・股関節などの近位関節の拘縮を来すとともに脊柱の後側弯を来すこと が特徴である。筋生検痕がケロイド化しやすく皮膚にも何らかの異常があるものと考えられている。典型例では10歳までに歩行不能となる。全く歩行しない例 もある。一方で、20歳を過ぎても歩行可能な軽症例も存在する。比較的、呼吸筋が侵されやすく、早期に呼吸管理が必要となる例もある。 | |
5. 合併症 | |
呼吸障害。歩行障害。 | |
6. 治療法 | |
根本的治療法はなく、リハビリテーションなど保存的治療のみ。 | |
7. 研究班 | |
ベスレムミオパチーとその類縁疾患の実態調査研究班 |