代謝疾患分野|カルバミルリン酸合成酵素Ⅰ欠損(平成22年度)
かるばみるりんさんごうせいこうそいちけっそん
| |
1. 概要 | |
アミノ酸代謝により生じたアンモニアは、肝臓の尿素サイクルにより尿素 に転換され解毒される。この過程に異常があり、アンモニアの解毒が出来ず、高アンモニア血症を来すのが尿素サイクル異常症で、カルバミルリン酸合成酵素Ⅰ (CPS1)欠損症は尿素サイクル異常症の一つに分類される。 | |
2. 疫学 | |
尿素サイクル異常症は最も高頻度な先天代謝異常症の一つであり、尿素サイクル異常症に属する各疾患あわせて約8000人に一人、カルバミルリン酸合成酵素Ⅰ欠損症の本邦患者数は約30人と推定される。 | |
3. 原因 | |
アンモニア解毒のはじめのステップであるアンモニアと重炭酸イオンの結合を触媒する酵素がカルバミルリン酸合成酵素(CPS1)で、CPS1の異常によりこのステップが進まずアンモニアの解毒が進まない。生化学的所見とCPS1遺伝子の解析により確定診断される。 | |
4. 症状 | |
重篤な新生児発症の型と、発症年齢が様々な軽症亜型がある。新生児期には、生後早期に急速に進行する哺乳不良、過呼吸、傾眠、昏睡を伴う脳症がみられる。重篤な高アンモニア血症の発作は致死的となりうる。慢性的には精神発達遅滞、慢性神経学的症状、嘔吐、摂食障害。 | |
5. 合併症 | |
新生児期に凝固障害による頭蓋内出血。 精神運動発達遅滞。 | |
6. 治療法 | |
食事療法(蛋白制限、充分なカロリーの補充)、アルギニン、安息香酸ナ トリウム・フェニル酪酸、L-カルニチン、ラクチュロース内服。急性期はグルコース大量静注による異化亢進状態の阻止、アシドーシスの補正、タンパク摂取 の中止、有害代謝物の血液浄化療法による除去。一部の症例で肝移植が行われている。 | |
7. 研究班 | |
有機酸代謝異常症(メチルマロン酸血症・プロピオン酸血症)、尿素サイクル異常症(CPS1,OTC欠損症)、肝型糖原病の新規治療法の確立と標準化研究班 |