代謝疾患分野|プロピオン酸血症(平成22年度)
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1. 概要 | |
先天性有機酸代謝異常症の一つで、体内にプロピオン酸を中心とする有機 酸が蓄積し、ケトーシス、アシドーシスを生ずる遺伝性疾患の総称。プロピオニルCoAカルボキシラーゼの遺伝子異常による活性低下により、プロピオニル CoAが上昇、プロピオニルCoAがトリカルボン酸回路、尿素回路、その他の代謝系素酵素群の活性を阻害するため、様々な代謝異常が起こる。 | |
2. 疫学 | |
本邦の発症頻度は40~50万人に一人と考えられていたが、タンデムマスを用いた新生児スクリーニングではおよそ3万人に一人の割合で出生することが明らかとなった。その大部分は軽症型と考えられる。 | |
3. 原因 | |
プロピオニルCoAからメチルマロニルCoAへの代謝を触媒する酵素で あるプロピオニルCoAカルボキシラーゼの欠損によりプロピオニルCoAが蓄積し、これがトリカルボン酸回路、尿素回路、その他の代謝系素酵素群の活性を 阻害するため、様々な代謝異常をきたし。発病する。原因遺伝子が同定され、遺伝子検査による確定診断が可能。 | |
4. 症状 | |
急性期(アシドーシス発作時)は頻回の嘔吐と脱水、呼吸窮迫、意識障害をきたす。慢性的には嘔吐と食欲不振、成長障害、発達遅滞、肝腫大、易感染性、骨粗鬆症を認める。心筋症、骨髄抑制による血球減少症、衰退街路症状を認めることもある。症状は病型によって差異がある。 | |
5. 合併症 | |
膵炎、心筋症の合併が見られる。心筋症は重症アタック時に急激に発症し、致死的となりやすい。 精神遅滞、錐体外路症状、骨粗鬆症を合併する。 食事療法により脂肪肝になりやすい。 | |
6. 治療法 | |
食事療法(蛋白制限、Ile,Val,Met Thr 制限)、L-カルニチン、メトロニダゾール内服。急性期はグルコース大量静注による異化亢進状態の阻止、アシドーシスの補正、タンパク摂取の中止、有害代 謝物の血液浄化療法による除去、カルニチン投与。一部の症例で肝移植が行われている。 | |
7. 研究班 | |
有機酸代謝異常症(メチルマロン酸血症・プロピオン酸血症)、尿素サイクル異常症(CPS1,OTC欠損症)、肝型糖原病の新規治療法の確立と標準化研究班 |