代謝疾患分野|リジン尿性蛋白不耐症(平成22年度)
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1. 概要 | |
本症の病因は、二塩基性アミノ酸(リジン、アルギニン、オルニチン)の輸送 蛋白の一つである y+LAT-1( y+Lアミノ酸トランスポーター1)の機能異常である。本症は常染色体劣性遺伝を呈し、患者はフィンランド、イタリア、日本に集積する他、散発例も報告さ れている。 | |
2. 疫学 | |
国内に40-50名程度と推測される。 | |
3. 原因 | |
二塩基性アミノ酸の腸管からの吸収障害、腎での再吸収障害を来す結果、アミ ノ酸バランスの破綻、蛋白合成の低下を招き、諸症状を来す。尿にはリジン、アルギニン、オルニチンが大量に排泄され、これらの血中濃度は低値を示す。また 本蛋白は他臓器(白血球、肺、肝、脾等)でも発現が確認されており、多彩な症状は各々の膜輸送障害にも起因することが推定される。更に、アルギニンは体内 一酸化窒素産生の基質でもあり、本症では一酸化窒素産生低下に基づく血管内皮機能障害、凝固機能異常が報告されている。 | |
4. 症状 | |
症状及び重症度は多岐に渡る。蛋白摂取量が増える離乳期以後に症状出現する 例が多いが、軽症例は成人まで気づかれないこともある。初期症状は嘔吐、下痢、体重増加不良、筋緊張低下が多い。1歳前後で牛乳、肉、魚などの蛋白質を嫌 うようになる(摂取により体調を崩す為)。蛋白過剰摂取後には目眩、嘔気/嘔吐、高アンモニア血症による意識障害を呈する。蛋白摂取と嘔吐の関連に気付か れず、慢性腹痛、急性腹症、癲癇などと診断される例もある。 | |
5. 合併症 | |
晩期的には、間質性肺炎、肺胞蛋白症、腎尿細管病変、腎炎、腎不全などがあり、十分な観察が望まれる。妊娠時には貧血、出血傾向、妊娠中毒症が生じやすい。高アンモニア血症の程度によるが、一部に知能障害を残す。 | |
6. 治療法 | |
充分なカロリー摂取と蛋白制限、アミノ酸補充が主体となる。 L-シトルリンは本症に有用とされる。二次的な低カルニチン血症にはL-カルニチンが有効である 。その他、免疫能改善を目的としたγグロブリン療法、肺、腎合併症に対しステロイド療法などが試みられている。 | |
7. 研究班 | |
リジン尿性蛋白不耐症の最終診断への診断プロトコールと治療指針の作成に関する研究班 |