整形外科疾患分野|レリーワイル症候群(平成22年度)

れりーわいるしょうこうぐん
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1. 概要

SHOX遺伝子(Short stature homeobox containing gene) のへテロの機能喪失変異に起因する遺伝疾患である。SHOXは性染色体上に位置する遺伝子であるが、擬常染色体領域内に存在するため、LWSの遺伝形式 は、常染色体優性遺伝である。SHOXは、骨細胞特異的に転写活性化能を発揮する核内転写因子であり、四肢骨および頭頸部における骨成長促進効果と成長板 融合抑制効果を有すると推測される。LWS患者では、成長障害および四肢骨短縮と変形が認められる。

2. 疫学

1997年に最初の患者が同定され、その後、世界で200例以上が報告 されている。しかし、正確な発症率は把握されていない。さらに、LWSの診断はしばしば困難であるため、未診断例が多く存在する可能性がある。事実、われ われは、原因不明の成長障害患者700例を対象としてSHOX遺伝子変異解析を行い、2.4%において遺伝子変異/欠失を同定している。このことから、 LWSが、先天性骨形成異常症の中で比較的頻度の高い病態であることが示唆される。また、性染色体構造異常を有する患者の一部において本症が認められるこ とがある。

3. 原因

LWSの遺伝子異常としてSHOX遺伝子内点変異、遺伝子内微小欠失、 全遺伝子欠失、エンハンサー欠失が知られている。LWSの遺伝子異常は、人種によって異なると推測される。われわれは、これまでに26家系の解析を行い、 日本人患者ではSHOX翻訳領域あるいはエンハンサー領域を包含する微小欠失が約70%を占め、遺伝子内点変異は約20%のみであることを報告している。 なお、臨床的にLWSと診断される患者の約20%では、SHOXに異常が同定されない。このような患者における遺伝子異常は不明である。

4. 症状

LWS患者における主な症状は、成長障害、四肢骨変形、その他の骨症状である。
成長障害:LWSでは、小児期から成長障害を認める。成長障害の程度は、四肢骨変形の重症度に依存する。骨変形が軽度である症例は、ほぼ-2.0 SDの成長曲線に沿って成長し、成人期において約12 cmの身長減少を呈する。四肢骨変形を伴う症例では、変形の重症度に相関してより重度の成長障害を認める。
四肢骨変形:LWDにもっとも特徴的な骨変化は、前腕マデルング変形であり、レントゲン上、橈骨成長板の早期癒合、橈骨および尺骨遠位端の先鋭化、橈骨の 短縮と彎曲が認められる。臨床的には、関節可動域制限、変形、疼痛を生じる。また、プロポーション異常を伴う四肢短縮型低身長を呈する。このような骨変形 は、思春期以降の女性患者において重度となることか多い。
その他の骨変形:一部の患者では、上記に加え、短頚、外反肘、高口蓋などの骨症状が認められる。

5. 合併症

正常核型患者においては、通常、成長障害と骨症状以外の症状を認めない。

6. 治療法

現在、本症に対する治療指針の統一はなされていない。一部の症例では、 成長ホルモン投与が試みられている。これまで、成長ホルモン投与が短期的に成長率を改善したという報告がなされたが、最終身長に対する効果の有無は不明で ある。さらに、成長ホルモンが、骨変化を増悪する可能性は否定されていない。一方、少数の女性患者では、思春期前からのGnRHアナログ投与による性腺抑 制療法が行なわれている。この治療法の適正化に関し、今後検討が必要である。また、骨変化による疼痛と関節可動域制限に対しては、しばしば外科的治療が必 要となる。しかし、本症に対する外科的介入のアウトカムについての充分なデータはない。

7. 研究班

レリーワイル症候群の実態把握と治療指針作成班