奇形症候群分野|Beckwith-Wiedemann症候群(平成22年度)

べっくうぃず-う゛ぃーでまんしょうこうぐん
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1. 概要

BWSは、巨舌、腹壁欠損(臍帯ヘルニア、腹直筋解離、臍ヘルニア)、 過成長を三主徴とする先天奇形症候群である。約15%の症例で肝芽種、横紋筋肉腫、Wilms腫瘍など胎児性腫瘍が発生する。14番染色体ダイソミーや Sotos症候群等の過成長を呈する疾患との鑑別が必要。

2. 疫学

海外での発生頻度は1/13,700と報告されている。国内の患者数は推定200人以上。男女比はほぼ1。

3. 原因

BWSの大部分は孤発例であり、家族例は15%である。BWSの原因遺 伝子座は11番染色体短腕15.5領域(11p15.5)で、この領域には多くの刷り込み遺伝子がクラスターを形成して存在する。BWSは、 11p15.5の刷り込み異常によって生じる。11p15.5には、2つの刷り込みドメイン、KIP2/LIT1ドメインとIGF2/H19ドメインがあ り、それぞれ刷り込み調節領域により周辺の刷り込み遺伝子の発現が制御されている。BWSの35%はKIP2/LIT1ドメインのKvDMR1脱メチル化 によるKIP2 (CDKN1C)の発現低下により、3%はIGF2/H19ドメインのH19-DMR高メチル化によるIGF2の発現上昇により発症する。しかし、これら のメチル化異常が生じる原因は未解明である。18%に父性ダイソミー(upd(11)pat)を認め、これはKvDMR1脱メチル化とH19-DMR高メ チル化を同時に認める。6-7%でKIP2の遺伝子変異、6-7%で染色体構造異常を認める。約30%ではこれらの異常は認められない。

4. 症状

巨舌、腹壁欠損(臍帯ヘルニア、腹直筋解離、臍ヘルニア)、過成長が三 主徴である。三主徴の他に、耳の奇形(耳垂の線状溝、耳輪後縁の小窩)、腹腔内臓器腫大、新生児期低血糖、片側肥大、火焔状母斑の症状が見られる。臍帯ヘ ルニアについては、肝臓・腎臓・脾臓・膵臓など臓器の肥大が見られるため、腹腔内に臓器がおさまり切れず、圧出された腸がへその緒に突出し、臍帯ヘルニア となる。巨体については、胎生期から過成長を示し、胎盤重量増加・羊水過多・臍帯過長が見られる。

5. 合併症

口腔内に収まり切れない巨舌を放置した場合はほ乳障害を、長期的には咬合障害・下顎前突を生じる。このような障害が合併する場合には、舌縮小術(舌部分切除術)を要する。
新生児期以降も鼠径ヘルニア、臍ヘルニア、腹直筋離開などで手術を要することがある。
約15%の症例で肝芽種、横紋筋肉腫、Wilms腫瘍など胎児性腫瘍が発生するが、腫瘍発生部位は肝臓が多く、Wilms腫瘍は比較的少ない。

6. 治療法

根本的な治療方法はなく、対症療法を行う。
臍帯ヘルニア、巨舌については、必要に応じてヘルニア根治術や舌縮小術などの外科的手術を行う。
低血糖については、50mg/dl以下にならないように6時間毎にモニタリングし、グルコースを補充する。長期の血糖コントロールが必要な場合がある。また、脳障害を生じると長期的加療が必要となる。
胎児性腫瘍については、定期的に超音波、CT、MRI等によるスクリーニングが必要。腫瘍が生じた場合は、化学療法および外科的切除をおこなう。
片側肥大の場合は、脚長の左右差が生じるため脚延長術を施行することもある。

7. 研究班

ゲノム・エピゲノム解析に基づく刷り込み疾患Beckwith-Wiedemann症候群の診断基準作成と治療法開発基盤の確立班