特発性門脈圧亢進症(指定難病92)
1. 特発性門脈圧亢進症とは |
肝臓や門脈(小腸からの栄養分を多く含む肝臓に流入する血管)自体に特別な病変が存在しないにもかかわらず、肝臓内の細い門脈の枝が閉塞もしくは狭窄した結果、門脈の圧が上昇し、食道胃静脈瘤の発生や、脾臓の腫大、貧血等の症状を呈する疾患のことです。 |
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか |
有病者数は810~1,300人程度であり、このうち約10%が年間の新発生患者数です。本邦においては人口100万人当たり7.9人の 有病率 であろうと推定されています。欧米より日本にやや多い傾向があり、また、都会より農村に多い傾向があります。 |
3. この病気はどのような人に多いのですか |
男性より女性の方が2.4倍ほど多く、また、発症年齢のピークは40~50歳代です。 |
4. この病気の原因はわかっているのですか |
正確な原因は不明ですが、中年女性に好発し、血液検査で免疫異常が認められることがあることから、何らかの自己免疫機序(自分自身の体に対して自分の免疫が働く状態)の関与が推測されています。更に最近の研究により、血液中の一部のリンパ球の働きの異常が指摘されています。現在このような免疫の異常に関して重点的に研究が行われており、今後の解明が期待されます。 |
5. この病気は遺伝するのですか |
遺伝性に関して明らかなデータはありません。ただし、自己免疫異常という病態は、一般的に家系内に多発する傾向があることから、何らかの素因(遺伝子変異)の関与が否定できません。この点に関しても現在研究が行われています。 |
6. この病気ではどのような症状がおきますか |
門脈圧が上昇すると、脾臓が大きくなり腹水が貯まります。さらに、門脈圧の上昇により門脈血の一部が肝臓に向かわずに他の臓器に逃げるようになります。このようにしてできた新しい血液の流通経路を 側副血行路 と言います。この側副血行路のために腹壁の静脈が怒張し、食道や胃に静脈瘤ができます。脾臓が大きくなると脾機能 亢進 という状態になり、貧血をきたすようになります。また血小板も少なくなり、出血した時に血液が止まりにくくなります。さらに、静脈瘤の内圧が上昇すると、静脈瘤自体がその圧に耐えきれなくなり、破裂・出血してしまい、吐血・下血等の症状が出ます。出血のためショックになり死亡することもあります。 |
7. この病気にはどのような治療法がありますか |
特発性門脈圧亢進症では、門脈圧亢進症にともなう食道胃静脈瘤と、脾機能亢進症にともなう貧血(汎血球減少症:赤血球、白血球、血小板の全てが減少してきます)が治療の対象となります。 静脈瘤が出血した際には緊急の処置が必要です。放置すると出血のためショックとなり、場合によっては生命が危険にさらされる可能性があります。このような場合は直ちに最寄りの救急病院を受診し、点滴・輸血などの救急処置をした上で、静脈瘤からの出血に対して内視鏡を使った出血処置を受けなければなりません。 |
静脈瘤に対する止血処置 |
・薬物療法 |
脾機能亢進症に対する治療 |
・血球減少が高度の際には部分的脾動脈塞栓術や脾摘術を考慮します。 |
8. この病気はどういう経過をたどるのですか |
特発性門脈圧亢進症では肝機能は一般に正常のことが多いので、食道胃静脈瘤からの出血が十分にコントロールされれば経過は良好です。 |
9. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。 |
該当する病名はありません。 |