リンパ脈管筋腫症(LAM)(指定難病89)

りんぱみゃくかんきんしゅしょう(LAM)

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

※分野別に参照できます。メニューをクリックして分野を選択してください。

■「治療」に関して 2

移植後にかかる薬代、機械などの平均治療費を教えて下さい。
幸いなことに、移植後に用いる免疫抑制剤の主要なものは、2003 年 1 月から保険適用となりましたので、全額自己負担ということはなくなりました。それでも、身体障害者などの適用となっていない場合には 3 割の自己負担が生じるわけですから、月数万円程度の医療費がかかることになります。抗ウイルス剤など、特殊な薬剤を使わなければならない場合、このような 薬剤の中には保険適用となっていないものがあり、自己負担が生じる場合があります。機械というのは、スパイロメーターやパルスオキシメーターのことだと思 いますが、それぞれ 5~10 万円程度です。保険はききませんので、自己負担となることが多いと思います。
(過去の患者の会での勉強会の内容です。最新情報は各自ご確認下さい。)
移植後の免疫抑制剤の副作用の具体的例を教えて下さい。
これは、あげればきりがないぐらいたくさんあります。最も頻度が高く、注意を要するのは感染、特に気管支炎や肺炎です。免疫 抑制によって、通常はかかることがまずない特殊なウイルス感染などを発症する場合もあります。もう一つ重要なものは、ネオーラルやプログラフによる腎機能 障害です。欧米では、肺移植後 5 年以上経過した患者様の10 %が腎不全に陥った報告もあり、透析が必要になることもあります。命には直接すぐにはかかわらないものの重要な副作用としては、ネオーラルの多毛、高血 圧、プログラフの糖尿病、高血圧、セルセプトの貧血、ステロイドの骨粗鬆症や肥満、胃潰瘍などがあります。これらの副作用は、もちろん必ず出現するという ものではなく、また、出現してもごく軽症で済んでいる場合もあります。一方、これらの副作用、特に感染が移植後の死因となることも少なからずあります。
移植後の生存年数を教えて下さい。
国際的な一般的な数字としては、1年生存率: 75%、 3年生存率: 60%、5年生存率: 50%、10年生存率: 30%です。これまでの日本の肺移植の生存率は、上記の数字よりやや良好ですが、まだ数が少なく、観察期間も短いことを考慮する必要があります。(過去の 患者の会での勉強会の内容です。最新情報は各自ご確認下さい。)
移植手術をする上でのマイナスになりうる処置、その理由(癒着等)、 移植手術する上で問題にならない、あるいは受けても良い処置、その理由(カバーリング術など)を教えて下さい。
癒着術が施行された後の肺移植は、癒着剥離に伴い出血量が多くなる点で不利だと言えます。特に、人工心肺を使わなければならない場合には、ヘパリンという 血をかたまりにくくする薬剤を使う必要があるため(人工心肺内で血液が固まってしまうのを防止するため)、出血量が非常に多くなる可能性があります。とは いえ、気胸や乳糜(にゅうび)胸のコンロトールのために癒着術をしなければならない患者様もたくさんいらっしゃいます。癒着術が肺移植に対しては不利にな ることは確かですが、癒着術をしたから肺移植の適応外とすべきだとは考えていません。
カバーリング術は、気胸のコントロールのためには有効で、癒着も比較的少ないようです。この意味では、癒着術よりもカバーリング術の方が、肺移植に対して は有利だと言えると思います。ただし、カバーリング術では乳糜胸のコントロールは難しいと思いますので、乳糜胸を合併している場合には、癒着術をせざるを 得ない場合があります。
国内外の移植後の再発率。片肺、両肺の場合、それぞれ教えて下さい。
少し前(1996年)の報告になりますが、外国の論文で 34例中片肺移植後の 1 例(約 3%)に再発がみられた(平均観察期間 3 年程度)というものがあります。また、1999 年の外国の論文で 13 例中、両側肺移植後の 1 例(約 8%)に再発がみられた(平均観察期間不明)というものがあります。日本でどの位再発があるかは詳しく調査していないので正確なデータはありませんが、や はり 10%ぐらいの再発があるようです。(過去の患者の会での勉強会の内容です。最新情報は各自ご確認下さい。)
移植する前に死亡した患者数、また死亡理由(具体例)
臓器提供が少ないこともあり、残念なことに日本では肺移植登録後に亡くなられる方が、移植を受ける方よりも多いのが現状です。現在まで肺移植登録をされた 患者様 260 名(LAM に限らず全ての疾患です)中、脳死・生体肺移植を受けた方が 48 名、待機中に亡くなった方が 92 名となっています。亡くなる理由は、ほとんどの場合が呼吸不全です。LAMは、肺移植適応疾患の中では比較的進行がゆるやかな疾患ですので、亡くなった方 の中に占める LAM の患者様の割合は大きくはありませんが、それでも 10 名を越す患者様が肺移植登録後、移植を受けられる前に亡くなられています。
(過去の患者の会での勉強会の内容です。最新情報は各自ご確認下さい。)
肺移植後の食生活について海外では論文がでているようですが、日本でもそういう研究はされているのでしょうか?
肺移植後の食事については、東北大学では特別な制限は設け ていません。海外の施設、日本国内の他の施設でも、施設間に多少の違いはあると思いますが、特別な制限を設けているところは多くないと思います。とはい え、気をつけなければならないことがいくつかあります。一つはグレープフルーツやグレープフルーツジュースは、免疫抑制剤の血中濃度が異常に高くなってし まうため禁止ということです。もう一つは、LAMの患者様で、乳糜(にゅうび)胸や乳糜腹水の問題がある方は、マクトンオイル食という特別な食事を摂って いただかなければなりません。免疫抑制剤により糖尿病や高血圧、高脂血症などが出やすくなることがありますので、これらに気を配ることも大切です(もちろ んこれは移植後に限りませんが)。施設によっては生ものの摂取を制限しているところもあります。
約一年半前に脳死移植の登録をしましたが、その後、血痰、喀血などもあり、少し進行が早いらしく、今年 2 月に生体肺移植の話もされました。良く考えて決めれば良いと主治医にも言われましたが、悩んでいます。術後、再発することもあるというのも気になります。 脳死肺移植待機から生体肺移植を勧められる基準がありましたら教えて下さい。
数字で表されるような判断基準がないので難しいところですね。患者様が悩まれるのもごもっともです。たぶん、主治医の先生や 移植施設の先生も悩んでいるかもしれません。現状を総合的に判断して決めなければなりません。多くの専門医の意見を聞いた上で、最終的には御本人、御家族 で決定するしかないのだと思います。(過去の患者の会での勉強会の内容です。最新情報は各自ご確認下さい。)
登録していた病院から、通院しやすい病院へ転院する事は可能ですか?
患者の意志で転院する事は可能です。主治医の先生とご相談下さい。
移植後の妊娠の可能性について教えて下さい。
一般的に、移植後の経過がよければ、妊娠、出産は可能と考えられています。免疫抑制剤の催奇形性なども皆無ではありません が、頻度がそれほど大きく増すことはないと報告されています。ただ、LAM の場合には、腹部などの病変が進行する可能性、移植肺再発のリスクが増す可能性は否定できませんので、主治医の先生とよく相談する必要はあるでしょう。
結節性硬化症は進行を遅くする方法などないのでしょうか?
結節性硬化症の治療は現時点では対症療法のみです。肺病変を合併している場合、ホルモン療法や肺移植が行われる事があり、また最近は臨床試験として、ラパマイシンの投与も試みられていますが、まだ一般的ではありません。
LAMの合併症として肺高血圧症を発症した場合、LAMや移植に何か影響はありますか?また、LAMと肺高血圧症の治療は平行して行えますか?
肺高血圧症があると予後が悪い可能性があります。移植の登録は早めにした方が良いかもしれません。肺高血圧症の治療と LAMの治療は通常平行して行う事は可能です。
ドレナージ、胸腔鏡手術にかかわらず、気胸の手術後、すぐに歩かされる病院と、絶対安静にさせる病院がありますが、両者の違いは何故ですか?またその違いによって、再発率は変わりますか?
教科書では術後は安静が重要と書いてあります。しかし、最近の研究では普通に歩行したり、活動した方が実は肺の膨張が良いと の研究があり、なるべく動かすように、自由にさせています。安静を強調するやりかたは経験の少ない医師のやり方といえるでしょう。再発率に差はないと思い ます。
腎血管筋脂肪腫(AML)からの出血は今回で二度目ですが、いずれも生理中でした。そこで、やはりホルモ ンと関係しているのだと思い、試験的にスプレキュア点鼻薬を使ってみることにしました。しかし、ホルモン治療が100%腎臓の出血を抑えられるかは否かは 不明だそうで、「気を付けて下さい」というだけで先生も日常生活上の留意点はあいまいです。具体的なことがわかったら心強いのですが。
AML からの出血に対するホルモン治療の効果に関する成績はないのが現状です。したがって、日常的な注意点としては、AMLのある腎臓に対して物理的な衝撃が加 わらないよう注意するしかありません。具体的には転倒、打撲などに注意し激しい運動には注意した方がよいでしょう。
私は腎血管脂肪腫の腫瘍がありますが、大きさはどのくらいになってから手術が必要でしょうか? 肺の機能が低下している患者の場合、手術は行うべきでしょうか?また、行う場合には局所麻酔もしくは全身麻酔などどちらがより影響を及ぼしますか?
良性腫瘍であり、無症状である限りは特別な治療を必要としないのが一般的です。しかしながら、悪性の可能性がある、出血による痛みや血尿といった症状がある、破裂の危険がある、などの場合に何らかの治療が必要になります。
多くの場合、腎機能を温存するために塞栓術が選ばれますが、奏効しない場合や出血の程度がひどい場合には、部分あるいは全腎摘出術が行われます。肺機能、 その他の全身合併症、などの状況を総合的に判断して手術適応や麻酔方法を選択します。以下、LAMの治療と管理の手引きから引用します(日本呼吸器学会雑 誌)。

[血管筋脂肪腫angiomyolipoma]
腎臓に好発するが、時に、肝臓,子宮,リンパ節,肺,血管,等の部位にも発生する。腫瘍の発育の程度は様々であり、定期的な画像検査(CT や超音波検査)が必要である。一般に、腎機能障害が出現することは少ない。治療方針の選択に際しては、泌尿器科,腎臓内科,消化器外科などの関連診療科と 連携して選択するが、概ね、大きさと自覚症状により以下のような対応が望ましい。
①腫瘍径<4cm,自覚症状なし
年1 回の画像検査。
②腫瘍径≧4~5cm,自覚症状なし
6 カ月毎の画像検査。
自覚症状がなくても、出血などの症状出現のリスクがあり、治療を考える場合もある。
③腫瘍径≧4~5cm,自覚症状あり(腰部の痛み,血尿などの出血,嘔気など)腫瘍の塞栓療法あるいは外科的摘出術を検討する。
脂肪の多い食事をし、活動量が増えると比例して乳糜(にゅうび)の生産量も増えると聞きましたが、それ以外に日常生活で、気をつけることがあったら教えて下さい。
乳糜の漏れがある人では、乳糜の産生が増えると漏れもひどくなります。脂肪の少ない食事を心がけることが大切です。乳糜の漏 れる程度も患者さん毎に違います。脂肪分の多い食事をすれば、すぐに乳糜の漏れの増える人もいれば、それほどではない人もいるでしょう。活動が増えれば乳 糜の漏れも増えますが、現実的には終日じっと安静にしているわけにもいきません。大切なことは、乳糜の漏れが増えるメカニズムを理解し、パニックにならず に自分の状態を理解し、知識を自己管理に役立てられるようにすることです。脂肪分の多い食事をしたときの乳糜の漏れ具合を理解し、自分の食事制限の程度に 反映させたり、 どのくらいの活動をしたらよいか、この程度の活動をしたらその後はどの程度の安静にしていれば回復するか、自分自身の病態を理解できるよう栄養指導で学ん だことを役立てられるようになってください。
低脂肪食は、一度始めたら、乳糜(にゅうび)が減ってきても続けた方がいいのでしょうか?
脂肪制限食は、乳糜がもれた原因に対する治療ではなく、あくまでも症状に応じた改善策・対応策であり、対症療法です。乳糜の 漏れる原因について治療がなされ、乳糜の漏れるスピードが遅くなっている、あるいは漏れなくなっている場合には、脂肪制限食の程度を緩和したり、あるいは 制限をやめてもよいでしょう。脂肪制限食にしたときの乳糜の減少効果(息切れや腹満感などの改善)、あるいは普通食を食べた時の乳糜増加効果(息切れや腹 満感などの増悪)を自分でよく理解し、脂肪制限の程度を自己コントロールできるようになりましょう。
一般に高脂肪の食事を取ると腹水が溜まりやすい、と言われていると思いますが、そのような食事を摂取して、どの位の時間で腹水が溜まる症状が出るのでしょうか。逆に言えば、低脂肪食に変えて、症状が緩和するとすれば、どの位の時間で、症状が良くなるのでしょうか。
絶食にして栄養を点滴だけで摂取するようにすると、数時間で乳糜(にゅうび)色が退色し、乳糜胸水や腹水は減少します。食事 の影響は食後数時間で現れると考えてよいでしょう。一方、乳糜胸水かどうかを確かめる検査で、バターに脂溶性の色素(例えばcoal-tar dye, Cosmetic Green No.6)を混ぜてパンに塗って食べてもらい、食後30~60分で胸腔穿刺をすると胸水が緑色になるかどうか、を見る試験があります。食事の影響は、この くらいの時間後(30~60分)には出始める、と理解してよいでしょう。
どの様な症状になったら、低脂肪あるいは無脂肪食になるのでしょうか? 一度、低脂肪食を始めると、どの位の期間続けるのでしょうか? 私は胸水とか溜まったことがないので低脂肪食をとるように言われていないのですが、切り替えた方がいいのでしょうか? どういうきっかけで導入するのでしょうか?
乳糜(にゅうび)胸水や腹水があれば低脂肪食を行いますが、無脂肪食は大変だと思います。それほど多く水が溜まっていなけれ ば、こころがける程度で艮いでしょう。柔軟に考えて下さい。乳糜はもともと腸で脂肪が吸収されてできるものです。食事の中の脂肪分が少なければ乳糜も少な くなります。治療の期間は水が溜まっている限り行い、通常長期になります。乳糜胸水・腹水を合併していなけれぱ食事療法の必要はありません。
リンパ系の病気の人は水分を体内で溜めやすいので、塩分を通常より控えるように指導されているようですが、乳糜(にゅうび)やリンパ浮腫もそうなのでしょうか?
日々の塩分摂取量は体内の水分量に影響し、塩分摂取量が多いと体内に貯留する水分量も多くなります。そのため、むくみのある 方、心不全の方では、一般に飲水量と塩分摂取量を控えるように指導されます。リンパ浮腫や乳糜貯留のある方も、同様の考え方が当てはまると思います。日々 の体重や自覚症状の推移を見ながら、飲水量や塩分摂取量に気をつけてください。
▲このページの上部へ戻る
情報提供者
研究班名難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日令和3年9月(名簿更新:令和6年6月)