その他|びまん性絨毛膜羊膜ヘモジデローシス(平成23年度)

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1. 概要

胎盤病理組織診断において、絨毛膜板・卵膜にヘモジデリン色素が色素顆粒のままびまん性に沈着、または貪食細胞に取り込まれる病態のこと。病理学的には羊膜壊死を合併することが多い。肉眼所見では古い辺縁出血や、絨毛膜下血腫、周郭胎盤を伴うことが多い。赤血球からヘモジデリンに至る代謝過程や貪食細胞の反応などを考慮すると出血から3~8日以上は経過していると考えられている。
母体に対する合併症としては早産が代表的である。
新生児合併症としては、特に早産極低出生体重児では、新生児慢性肺疾患や新生児遷延性肺高血圧の合併率が高く、一方で呼吸窮迫症候群の発生率は出生した週数と比べて低い。

2. 疫学

全分娩数の約0.5%に合併するため年間およそ5,000例発生していると推定される。特に、出生体重1,500g未満の極低出生体重児で新生児慢性肺疾患を発症した場合には約20%と報告されている。

3. 原因

分娩時の羊水が血性であることから、辺縁出血や絨毛膜下出血が羊水腔中に移行拡散し、赤血球中のヘモグロビンの成分である鉄が色素顆粒のまま、びまん性に絨毛膜や卵膜に沈着、貪食細胞に取りこまれるものと考えられている。

4. 症状

妊娠中の母体では、妊娠中から繰り返す性器出血や羊水過少が特徴である。羊水は血性であり、胎盤胎児面ならびに卵膜は肉眼的に茶褐色ないし暗緑色を呈す。また、出生直後の新生児気管内/胃内吸引物は茶褐色または緑褐色である。

5. 合併症

妊娠中の母体では、死産・早産出生が多い。また、局所の感染を合併し子宮内炎症を合併することも多く、この場合には早産出生のリスクがさらに高まる。出生した早産極低出生体重児では、新生児呼吸窮迫症候群の合併率が低いにもかかわらず、特に羊水過少を伴う例では出生直後の循環不全である新生児遷延性肺高血圧症から低酸素血症を呈す。また病理学的に羊膜壊死を合併した場合には、新生児慢性肺疾患の合併率が高い。

6. 治療法

本症に対する直接の治療法はない。
切迫早産をきたした母体に対しては、症状に合わせた早産管理を行う。
出生した新生児に対しては、合併症に対する治療を行う。

7. 研究班

びまん性絨毛膜羊膜ヘモジデローシスの病理診断システムの確立と新生児慢性肺疾患発症
リスク因子の解析