奇形症候群分野|遺伝性非クロム親和型パラガングリオーマ(PGL)(平成23年度)
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1. 概要 | |
パラガングリオーマ (PGL) は、傍神経節 (Paraganglia)より発生したゆっくり成長する良性腫瘍で、腫瘍血管新生をもたらす。非クロム親和型 (Nonchromaffin type) は分泌活性をもっていない。ほとんどの場合、頭頸部ででき、頸動脈小体は出現部位の中で最も多い。一方、クロム親和型 (Chromaffin type) は一般的に頭頸部以下の部位からでき、副腎髄質からできるものは褐色細胞腫 (Pheochromocytoma) で区別される。 | |
2. 疫学 | |
国内で10~100人程度の患者数。 | |
3. 原因 | |
SDHD遺伝子 (11q23)、SDHC遺伝子 (1q21)、SDHB遺伝子 (1p36) の変異がそれぞれPGL1、PGL3、PGL4の原因である。これらの遺伝子はすべてコハク酸脱水素酵素 (ミトコンドリア複合体II) のサブユニットをコードする。インプリント遺伝子、SDHDの変異 (PGL1) の場合、父親から変異を受け継いだ子供はリスクが高く、母親から受け継いだ場合発症頻度がかなり低い (ただし、稀に発症することが知られている)。また生殖補助医療との関連性も指摘されている。 | |
4. 症状 | |
頭頸部のPGLの発生は一般的に副交感神経の分布に関係し、非クロム親和型であり、頸動脈小体、迷走神経、頸静脈鼓室の周辺に発生する。この領域のPGLはカテコールアミンを産生しない。具体的には、頸動脈小体PGLでは頭蓋神経や交感神経の圧迫による神経症状;迷走神経PGLでは嚥下障害、発声障害、咽頭痛、咳;頸静脈鼓室PGLでは拍動性耳鳴り、難聴、頭蓋神経異常などがみられる。 | |
5. 合併症 | |
PGL患者に、消化管間質細胞腫瘍、腎癌と甲状腺乳頭癌がみられたことがある。 | |
6. 治療法 | |
手術療法が主である。 | |
7. 研究班 | |
先天性ゲノムインプリント異常症と生殖補助医療との関連に関する研究班 | |