奇形症候群分野|Pseudohypoparathyroidism, Type 1b (PHP1b)(偽性副甲状腺機能低下症タイプIb(PHPtypeIb))(平成23年度)
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1. 概要 | |
偽性副甲状腺機能低下症 (PHP) は、副甲状腺ホルモン (PTH) が十分生成されているものの、腎臓でのPTH反応性低下によって、低カルシウム血症、高リン血症を来す疾患である。外因性PTH負荷試験により、cAMP反応性低下が認められるものはⅠ型で、さらにGsタンパク活性の異常を認めるものはIa、認めないものがIbに細分類される。 | |
2. 疫学 | |
国内で100~200人程度程度の患者数。 | |
3. 原因 | |
PHP1bでは染色体20q13領域に存在するインプリント遺伝子Gsαサブユニット遺伝子 (GNAS) の変異が認められている。また、GNAS exon 1A プロモーター領域に存在するアレル特異的メチル化領域(DMR: differentially methylated region) のメチル化異常(インプリンティング異常 ) が腎尿細管で特異的にGsαの発現を低下させ、PHP1bを引き起こすと推測されている。また、生殖補助医療との関連性を指摘する報告もみられる(Gavin K, 2010 他)。 | |
4. 症状 | |
症状の大部分は低カルシウム血症に基づく。神経・筋肉系の症状として、全身けいれん、てんかん、テタニー発作、感覚異常が認められる。また、精神・神経系の症状として精神不穏状態、不安、抑うつ、知能発育遅延、痴呆がみられる。PHP1aとは違い、アルブライト骨異栄養症 (AHO: Albreight hereditary osteodystrophy) の症状を認めない。 | |
5. 合併症 | |
低カルシウム血症による症状として、循環器症状は心電図上のQTc延長、心不全、低血圧をきたす場合がある。その他にも抑うつ、知能発育遅延、白内障、歯牙発育障害がみられる。 | |
6. 治療法 | |
テタニー発作などの低カルシウム血症に伴う急性期症状に対し、カルシウム製剤の緩徐な経静脈的投与を行う。長期的には活性型ビタミンD3製剤投与で、血中カルシウム濃度を維持することができる。遠位尿細管でのカルシウム再吸収を促進するため、利尿剤を併用する場合もある。 | |
7. 研究班 | |
先天性ゲノムインプリント異常症と生殖補助医療との関連に関する研究班 | |