循環器系疾患分野|炎症性動脈瘤形成症候群(平成23年度)
| |
1. 概要 | |
全身の筋性血管、主に心臓に血流を供給する冠動脈に血管炎を起こし、不可逆的な著しい拡張、すなわち動脈瘤が形成される。ほとんど小児期に発症し、多くは川崎病に合併する。急性期免疫グロブリン治療の普及により発症率は減少したが、免疫グロブリン不応例や、免疫グロブリンに反応しても冠動脈瘤が形成される症例、川崎病以外の全身性炎症疾患に続発する例がある。冠動脈瘤形成を予知する診断法、有効な治療法は確立されていない | |
2. 疫学 | |
本邦では年間100人程度が新規に発症する。 | |
3. 原因 | |
全身性炎症を基盤とし、汎血管炎、特に冠動脈を中心に強い病変が形成される。血管壁への炎症細胞浸潤、内、外弾性板、中膜弾性線維の断片化により血管の脆弱性をきたし、不可逆的な著しい拡張を起こす。川崎病に合併することが多いが、その他、敗血症、若年性関節リウマチ等に合併することもあり、その原因、機序の解明は不十分のままである。 | |
4. 症状 | |
発熱、全身性の強い炎症症状に伴い、冠動脈が不可逆性に拡張し、動脈瘤が形成される。しばしば皮膚、粘膜、結膜症状を伴うことがある。 | |
5. 合併症 | |
動脈瘤内血栓形成、新生内膜形成による血管内腔とくに動脈瘤頚部の狭窄をきたし、狭心症、心筋梗塞の原因となる。また加齢に伴う動脈硬化を促進し、若年成人で急性冠症候群の原因となることがある。 | |
6. 治療法 | |
川崎病に続発するものに対しては、原疾患に対して急性期免疫グロブリン投与が行われ、瘤形成の予防に一定の効果があるとされる。約15%存在する免疫グロブリン不応例には、ステロイド、ウリナスタチン、免疫抑制剤投与などが試みられているが評価は定まっていない。冠動脈瘤が形成されてしまうと、内科的根治療法はなく、アスピリン、ワーファリン等抗凝固療法の継続が必要である。 | |
7. 研究班 | |
炎症性動脈瘤形成症候群の新規診断バイオマーカーの開発と診断基準の作成研究班 | |