脳クレアチン欠乏症候群(指定難病334)
1. 「脳クレアチン欠乏症候群」とはどのような病気ですか
脳クレアチン欠乏症候群は、脳の神経細胞で クレアチン が足りなくなることで、脳の働きが低下し、知的障害、言葉の遅れ、てんかん、自閉症スペクトラム、運動発達の遅れを呈する疾患です。
脳クレアチン欠乏症候群には、①AGAT(アルギニン:グリシンアミジノ基転移酵素)欠損症、②GAMT(グアニジノ酢酸メチル基転位酵素)欠損症、そして、③ クレアチントランスポーター 欠損症の3つの疾患が知られています。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
世界では、国にかかわらず、人口の約1.5%が知的障害を持っていると診断されます。AGAT欠損症は大変希な疾患で日本での報告例はありません。GAMT欠損症も希な疾患で世界で110例、日本では1例が診断されています。クレアチントランスポーター欠損症は欧米では知的障害の原因として頻度の高い疾患と考えられ、知的障害をもつ0.3〜3.5%という報告もありますが、日本での診断例は少なく、8家系が登録され、未診断例が多く存在していると考えられます。
3. この病気はどのような人に多いのですか
知的障害、言葉の遅れ、てんかん、自閉症スペクトラム、運動発達の遅れを呈する患者さんで考慮すべき疾患です。
4. この病気の原因はわかっているのですか
脳クレアチン欠乏症候群はいずれも遺伝子の変異によって発症する遺伝性疾患です。AGAT欠損症はGATM遺伝子、GAMT欠損症はGAMT遺伝子、そして、クレアチントランスポーター欠損症はSLC6A8遺伝子の変異によって発症します。
5. この病気は遺伝するのですか
AGAT欠損症とGAMT欠損症は常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式の疾患です。一人のお子さんが診断された場合、ご兄弟が1/4の確率で同じ体質を持つ可能性があります。クレアチントランスポーター欠損症はX連鎖性疾患です。通常、男性のみ発症します。女性が発症する場合は軽症と考えられます。症状のない健康なお母様が遺伝子の変異を持っている可能性があり、この場合、男児が1/2の確率で同じ体質を持つ可能性があります。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
知的障害、言葉の遅れ、てんかん、自閉症スペクトラム、運動発達の遅れを呈する疾患です。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
AGAT欠損症とGAMT欠損症は、脳の神経細胞でクレアチンを産生することが出来ないことで発症する疾患です。ですから、クレアチンを内服することにより症状の改善が期待される治療法のある疾患です。GAMT欠損症では、オルニチンや安息香酸ナトリウムの摂取、アルギニン摂取制限が併用されます。
クレアチントランスポーター欠損症では、脳内で作られたクレアチンが神経細胞内に運ぶ仕組みが上手く働いていません。ですから、クレアチンの内服は効果がないといわれています。現在、治療法の研究が進められています。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
AGAT欠損症とGAMT欠損症にはクレアチンの経口による治療法がありますが、対症療法が中心となります。
知的障害を主症状とするため、療育や生活支援を必要とします。
てんかんに対しては、抗痙攣薬の内服があります。
理学療法、作業療法、言語療法や学校での特別支援教育が必要です。
9. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
知的障害、てんかん、言語発達遅滞、精神運動発達遅滞
注意;脳クレアチン欠乏症候群には、AGAT(アルギニン:グリシンアミジノ基転移酵素)欠損症、GAMT(グアニジノ酢酸メチル基転位酵素)欠損症、そして、クレアチントランスポーター欠損症の3つの疾患が含まれています。
10. この病気に関する資料・関連リンク
小児慢性特定疾病情報センター 脳クレアチン欠乏症候群
https://www.shouman.jp/disease/html/detail/11_12_029.html
遺伝性白質疾患・知的障害をきたす疾患の診断・治療・研究システム構築班
http://plaza.umin.ac.jp/~pmd/iden_introduction.html
脳クレアチン欠乏症候群 研究班
http://atr-x.jp/atrx/about.html
日本小児神経学会認定小児神経専門医名簿
https://www.childneuro.jp/modules/senmoni/
遺伝子医療体制検索・提供システム(全国遺伝子医療部門連絡会議ホームページ内)
http://www.idenshiiryoubumon.org/search/